6日の衆院予算委員会で、立憲民主党の菅直人元首相が質問に立ち、安倍晋三首相に対して訴訟を起こし、自身の敗訴が最高裁で確定した「安倍メルマガ訴訟」について、首相の答弁を求める、異例の場面があった。

 同訴訟は、菅政権時代に起きた東京電力福島第1原発の事故に関し、当時野党議員だった安倍首相が菅氏の対応を批判した、2011年5月20日付のメルマガに関するもの。原子炉を冷やすための海水注入の措置を、菅氏が止めたとする内容で、菅氏は名誉を傷つけられたとして、安倍首相に1100万円の損害賠償などを求めて訴えを起こしたが、昨年2月、最高裁で菅氏の敗訴が確定。元総理が現職の首相を訴える異例の対応として注目を集めた。

 菅氏は敗訴したとはいえ、どうしても納得がいかない様子。「当時、海水注入を私がやめさせたという内容だったが、東電はその後、中断していなかったことを認めた。中断されたという記述は、事実として間違っていた」と主張し、「素直に考えれば、情報が間違っていたとメルマガを取り下げ、謝罪すべきだ」と求めた。

 安倍首相は、「すでに最高裁で結果が出たことを蒸し返して、この場(予算委員会)で議論することは非常に非生産的というか、無意味だ」「総理として行ったことについて答える義務はあるが、その前の私的な問題で、最高裁の判断が出ていることについて、ここで議論する必要はない」と、あしらった。「(菅氏との訴訟で)費用が相当かかった。(訴訟期間中には)総理の職務もあったが、対応に時間を割かれた」と、不快感も示した。

 しかし菅氏は、「事実関係と(最高裁で出た)評価は違う」「確かに判決には書かれているが、事実はひとつだ」と反論。「私があたかも(海水注入を)止めたように言い、(菅内閣の)不信任決議案を出した。それが歴史的な事実だ」と、訴えた。

 一方、菅氏は、小泉純一郎、細川護熙両元首相と同様に原発ゼロを主張。原発ゼロに同意せず、「責任あるエネルギー政策とはいえない」として、原発再稼働方針を崩さない首相に「自分の世代、当面の政権維持ができればいいと思っているのか」と、ただした。しかし、首相は「そんなことはございません」と、そっけなく反論した。