最終候補3案による選考が行われていた2020年東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの大会マスコットが「近未来の妖精」をイメージし、大会エンブレムにもある市松模様を取り入れたア案に決定した。大会組織委員会が2月28日、国内外の小学生が1学級単位で投票して決める“小学生マスコット総選挙”の開票結果を発表。全28万学級中、20万5755学級が参加し、福岡県のデザイナー谷口亮さん(43)が描いたア案が10万9041票を獲得し、選ばれた。小学生はもちろん、一般市民が投票し、マスコットを決めるのは五輪史上初の試みだった。
平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)の熱気を、20年東京大会へ巧みにバトンリレーした。冬季最多13個のメダルを獲得した日本選手団解団式のまさに翌日、東京五輪の顔となるマスコットが決定。組織委がかねて狙っていた時期で、森喜朗会長も笑顔で「グッドタイミングだった」と手応えを実感した。
午後0時10分ごろ、6万1423票のイ案、3万5291票のウ案を抑え、ア案決定が知らされると、品川区立豊葉の杜学園の体育館に集まった560人ほどの児童が大歓声を上げた。自分たちが投票した結果が、国家レベルの計画を動かした、これまで経験のない喜びだった。
選ばれたデザイナーの谷口さんも「頭が真っ白。大好きな奥さんに伝えたい」とだけ言い、歴史的な作品の当事者になり、放心状態で立ちつくした。
小学生投票を発案した審査員の夏野剛氏(慶大大学院特別招聘教授)は当初、投票率について「10%以上は参加してほしい」と弱気な姿勢も見せていたが、ふたを開ければ78%。「インターネットがある中、社会で納得感をどのように醸成するのかが今の時代、難しい課題だったが、意思決定の1つのあり方を示せたのでは」と納得の表情だった。
大会エンブレムの反省も生かした。16年4月25日の発表会見直前、一部メディアに情報が漏れた。旧エンブレムの白紙撤回を反省材料に、徹底して情報公開に努め、会見にこぎ着けるも、最後で不透明な漏えいが出て、不満が残った。
マスコットは失敗できない-。今年1月、武藤敏郎事務総長は担当者を呼んだ。「発表当日まで事前開票はしない」との方針を伝え、「画竜点睛を欠くな」とくぎを刺した。
事前準備が必要だった垂れ幕と配布用うちわ、プレスリリースは3案分を用意。担当者は2月27日の深夜から発表まで、ほぼ寝ずに集計などの作業を続けた。
夜が明け、午前10時30分開始のマスコット審査会が開かれるまで、決定作品を知っていたのは組織委の実務担当者3人のみ。森会長、武藤総長、担当次長も知らないという徹底ぶりだった。情報漏えいの可能性をゼロにしようと、審査会前には出席者全員のスマートフォンも回収した。
今後はマスコットの名前を検討していくが、こちらは一般公募ではなく専門家に業務委託する。その中から複数案をマスコット審査会に提示し、谷口さんも交えて話し合われる。6月に決定する予定だ。【三須一紀】

