財務省の福田淳一事務次官(58)のセクハラ疑惑で、麻生太郎財務相(77)は17日、週刊新潮が公表した音声データについて「聞いた感じでは福田じゃないかという感じがした」と、声は福田氏との見解を示した。しかし財務省の調査に「自分の声であるかどうかよく分からない」と答えた福田氏はこの日、「自分の声が分からないのか」との報道陣の質問に沈黙したまま。一方、専門家は音声データの人物と福田氏は「90%以上同一人物」と分析している。
渦中の福田氏はこの日、報道陣の「自分の声が分からないのでしょうか」「時間稼ぎとの批判がありますが」「女性側に名乗り出ろというのはパワハラじゃないでしょうか」などの問い掛けに一切答えず、沈黙した。
代わって麻生財務相は閣議後、「俺は聞いていて福田じゃないかという感じがした」と答え、音声は福田氏との認識を示した。一方で「一般に自分の声は自分では分からないものだと思う」とも話し、「福田も自分の声であるかどうかよく分からないと話している」と明かした。
セクハラを受けた女性記者に協力を求める財務省の調査方法については野党だけでなく、与党からも批判が相次いでいる。しかし、麻生氏は「女性が名乗り出なければセクハラを認定しないのか」との質問に、「本人が申し出てこなければ、どうしようもない。名乗り出なければ、セクハラ発言を認定するのは難しい」と答えた。「財務省と森友学園、どうなんですかね」「福田さんは引責辞任はないですよね」と質問する女性が記者であると確認されない限り、声の主が福田氏であってもセクハラではないとの認識だ。
一方、日本音響研究所の鈴木創所長は「抱きしめていい?」「胸触っていい?」などで使われた「ていい」という音声と「今日ね、今日ね」と言った時の「今日」の2語と、福田氏が国会答弁で使った「ていい」「今日」の声紋を鑑定し、「90%以上同一人物。残る可能性は兄弟か双子でしょう」と分析する。しかし、音声データからは相手の女性が記者であるかどうかは確認できない。
「福田氏が財務省の人と知るホステスが質問している可能性もゼロではない。(財務省の調査に対する発言で)『女性が接客しているお店に行き、お店の女性と言葉遊びを楽しむようなことはある』というのは実はうまい言い訳だ」(鈴木所長)。福田氏は女性記者が名乗り出ることはないと計算しているのか。
◆声紋 音声をソナグラフ(周波数分析装置)を使って3次元表示したグラフ。声は、声帯、口腔(こうくう)、鼻腔などの形によって人それぞれ固有の特徴があるため、指紋のようにそれぞれ異なった紋様が現れる。1965年(昭40)ごろから犯罪捜査にも利用されている。