元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士(61)は金融商品取引法違反の疑いで東京地検特捜部に逮捕されたカルロス・ゴーン容疑者(64)の逮捕劇と、今後の特捜部の捜査をどう見るのか。詳しく聞いた。

-グローバルな知名度を誇るゴーン容疑者の逮捕。フランス政府が筆頭株主のルノーとの3社連合の将来にも影響を与える大きな事件の捜査が動き出した

若狭氏 金融商品取引法というのは06年以前は証券取引法。特捜部は、山一証券事件やライブドア事件など多くの事件を立件してきている。今回も起訴は間違いないでしょう。有罪となれば、実刑4年以上は間違いない。他に会社法違反(特別背任)や、脱税が加われば、さらに刑期は延びることになる。

-20日にフランス大使館が東京拘置所でゴーン容疑者と接見した。国際的な動きも特徴的だ

若狭氏 保釈の問題があります。日本は保釈請求を早期に認める諸外国から見て、国際的に見て、容疑者の身柄の拘束が長いと見られがちです。フランスは人権意識も高い。さらに、ルノーと日産の統合という企業の主導権争いもある。いろいろな目に見えない動きがあるようですが、日本としては、淡々と刑事手続きを進めていくことになると思います。

-特別背任や脱税の再逮捕はあるのか。東京地検の今後の動きは

若狭氏 まず、今回の逮捕容疑には含まれていない16年3月期から18年3月期の直近3年の、30億円とも言われる所得隠しについて金融商品取引法違反容疑での再逮捕が考えられます。最初の逮捕容疑の事件が起訴された後、再逮捕の場合は、裁判所も保釈請求を退けることが多い。再逮捕のために、最初の容疑と直近3年間の容疑を分けていることが考えられる。さらに特別背任、脱税を立件できるか、詰めている段階ではないか。

-保釈金はどうなるのか。歴代最高額だったハンナン牛肉偽装事件(04年)の元会長の20億円を超えていく可能性は

若狭氏 まず、億単位は間違いない。過去最高額を更新していく可能性はあります。

-6月に導入された司法取引が、外国人執行役員との間で適用された。どの程度軽減されるのか

若狭氏 国内2例目ですが、不起訴になる場合や、量刑が半減したり、執行猶予がつく可能性があります。