「小沢王国」死守か、奪取か-。国民民主党の小沢一郎・総合選対本部長相談役(77)の地元岩手は、93年の小沢氏の自民党離党から四半世紀以上、自民党が参院選で議席を得ていない。今回、小沢氏が擁立を主導した横沢高徳氏(47)と、小沢氏と決別後、自民入りした平野達男元復興相(65)が最終盤も大激戦だ。19日、小沢氏と安倍晋三首相(64)は、ともに岩手に入ってガチンコ応援。「王国」の今後を占う戦いだ。

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「参院選では政権交代できないが、自民の(改選)66議席を50議席くらいに減らすことができれば、安倍さんは総辞職、退陣せざるを得ないだろう」。小沢氏は19日、花巻市など4カ所で、打倒安倍政権と横沢氏への支持を訴えた。

小沢氏が、野党統一候補として擁立を主導した横沢氏は、モトクロス選手時代の事故で車いすの生活に。10年バンクーバーパラリンピックには、チェアスキー選手として出場した。「私は、安倍首相が『ミス』だと言った大阪城のエレベーターに乗り、すばらしい景色を見ることができた。人の痛みが分かる政治を目指したい」と、訴える。

参院選の岩手選挙区は95年以降、小沢氏に近い候補が勝ってきた。自民が勝ったのは小沢氏の離党前、92年にさかのぼる。「小沢王国」のなせるわざだ。

27年ぶりの議席を目指す自民は今回、小沢氏の元側近ながら決別し、16年に自民入りした平野氏を公認した。ただ平野氏自身、小沢氏のもとで当選を重ねた。党を移り、形式的には現在岩手の自民党議員だが、横沢氏陣営は「24年間、岩手の有権者は自民党に議席を与えていない」と、平野氏の「変節」を批判する。

平野氏は民主党政権の初代復興相。首相は花巻市の演説で「私は民主党政権の批判をするが、(復興相時代の)平野さんを見て、こんな人に自民党に来てほしいと思っていた」と強調した。8日に続く2度目の岩手入りは危機感の表れ。「1位にならないと勝てない」とハッパをかける首相の横で、平野氏は「現職なのにふがいない。力を貸してほしい」と聴衆に訴えた。

肝いり候補と元側近。小沢氏をめぐる人間模様が絡む対決の勝敗は、「王国」の今後にかかわる。「岩手は野党協力の原点だ。まず岩手で勝利しなくてはならない」。小沢氏は、声を張り上げた。【中山知子】