コロナ禍が、ナニワの食文化も変えた-。大阪府の吉村洋文知事が特措法に基づく休業要請などを部分的に解除する基準「大阪モデル」をもとに、解除に踏み切る方針を示して一夜明けた15日、休業中の大阪の老舗、串カツ店「串かつだるま」は、独自ルール「ソースの2度漬け禁止」の共有ソースを変更し、新しいスタイルで16日から営業再開することを決めた。

「創業以来、91年間守ってきた大切なものですから、苦渋の決断です」。関西を中心に13店舗の「串かつだるま」を運営する「一門会」(大阪市浪速区)のエリア課長、岩城隆進さん(41)は苦しい胸の内を明かした。

だるまは、安倍晋三首相が14年、大阪視察の際に訪れたこともある名店だ。客は秘伝のソースがたっぷり入った銀色の容器に、揚げたての串カツをつけて皿に移す。一口食べて、ソースが足りないと思っても「ソースの2度漬け禁止」。これまでは仲間や家族など複数人が同じ容器を使えたが、感染防止対策で16日から原則、容器を撤去する。

代わりに「個別ソース」のボトルを設置する。岩城さんは「秘伝のソースの味は変わりません」と胸を張り「衛生面では最大限の注意を払い、お客さんの安心をいちばんに考えました。私たちも従来のスタイルを変えていかなければいけない」と語った。

政府の緊急事態宣言を受けて4月8日から全店舗を休業していたが「再開後はもう容器につけて食べることはできないのか」という問い合わせも多かったという。どうしても従来の大阪スタイルを要望する客には、有料で「ソース2度漬け禁止」容器を出すそうだ。

この日、大阪の繁華街・ミナミの「串かつだるま 道頓堀店」では従業員が集まり、府の感染防止対策マニュアルをもとに、客席の数を減らすなど準備を進めた。店頭には「復活や!! 営業再開」のポスター。大阪名物の串カツのスタイルも変わる。【松浦隆司】