将棋の高校生プロ、藤井聡太2冠(棋聖・王位=18)が17日、名古屋市内で行われた第14期朝日杯オープン戦の本戦トーナメント1回戦で大石直嗣七段(31)、準々決勝で豊島将之竜王(叡王=30)を破り、ベスト4に進出した。過去6戦全敗だった“ラスボス”の豊島と7度目の対戦でついに初勝利を挙げ、超えられなかった壁を突き破った。3月には高校を卒業するが、卒業後も地元・愛知を本拠地にし、史上初の「10代3冠」を目指す。

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絶壁のごとく立ちはだかる“ラスボス”を相手に、藤井が序盤から攻めた。17年8月の初対局から、対豊島戦は公式戦6戦全敗。ファンが見守る地元・愛知での公開対局で、後手番の藤井は、右銀を素早く繰り出す「早繰り銀」の作戦を選択した。

「持ち時間が短い将棋なので、なんとか積極的に攻めていける展開にしたかった」。拠点を作り、優位を築こうとする藤井の攻めを豊島が手厚く受ける。両者とも持ち時間40分を使い切り、1分将棋に突入すると、一手でも間違えれば、即勝敗に直結するぎりぎりの攻防が続いた。

攻めの姿勢を貫き、激戦を制した藤井は「最後、攻め合いにいったが、その判断がよかったかどうか。かなり際どいのかなと思っていました」と振り返った。 昨年7月、17歳11カ月の最年少で棋聖の初タイトルを獲得。18歳1カ月となった8月に王位も獲得し、史上初の「10代2冠」を達成した。異次元の強さを見せる藤井だが、どうしても勝てない難敵が豊島だった。

“ラスボス”からの公式戦初白星に「強い相手とできるのは楽しいことなので、過去の成績は忘れて、一生懸命指そうと思った」。分厚い壁をぶち破っても笑顔はなかったが、感想戦後のインタビューでは「いままで勝てていなかったので、なんというかホッとした気持ちはあります」。18歳の素顔をのぞかせた。

愛知県有数の進学校である中高一貫校の名古屋大学教育学部付属高校を3月に卒業する予定。大学へは進まず、地元・愛知を拠点に将棋1本に打ち込む。「自分がさらに実力をつけて活躍することで、地元の方に喜んでいただけると思っている。そういう活躍を目指したい」。

朝日杯で2年ぶり3度目の優勝を目指す藤井は2月11日、東京都内での準決勝で渡辺明名人(36)と対戦する。新年早々、最大の難敵を撃破する雄姿を地元で見せた。今年はタイトル初防衛、複数冠タイトル獲得を目指す。【松浦隆司】