旧統一教会の「世界平和統一家庭連合」への名称変更を文化庁が2015年に受理し、認証した問題で、前川喜平元文部科学事務次官は5日、「強い政治力が働いたことは間違いない。担当大臣の判断なしでは絶対進まない」と証言した。下村博文元文科相は「私が受理しろというようなことを担当者に言ったことはない」など関与を否定しているが、前川氏は「下村さんの意思が働いていたのは100%間違いない」と語った。

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国会内で行われた旧統一教会を巡る野党合同のヒアリングに出席した前川氏は、下村氏が「報告は受けたが、実際は文化庁文化部長の決裁・判断だった」「『受理しろ』と担当者に言ったことはなかった」「担当者から『対応しなければ行政上の不作為になる可能性がある』との説明を受けた」などと語り、関与を否定していることについて、官僚の立場から「強い政治の力が働いたことは間違いない」と証言した。

「報告は受けたが、判断は任せたという説明は成り立たないと思う。(当時、次官に次ぐナンバー2の文科審議官だった)私がノーと言っているケースだったわけだから、それをイエスと判断できる人は事務次官と大臣しかいない。文化部長が『やります』というのは役人の世界では絶対起こらない。政治の力なしでは起こり得なかったと思う」

前川氏が文化庁宗務課長だった1997年、旧統一教会から初めて名称変更の相談があった。当時、旧統一教会について宗教法人法に基づく解散命令を請求できないか、宗務課内で議論していたと振り返る前川氏は、名称変更は霊感商法、高額献金など問題の多い旧統一教会の実態隠しにつながる恐れがあることから、「申請されても認証できない」と教団に伝えた。以来、認証できないから申請しないようにという姿勢を文化庁は貫いてきた。「役人は前例踏襲で180度方針を転換することはしない」。文化庁文化部長が独自に方針を変更し、受理、認証するなど、あり得ないと証言した。

「旧統一教会は申請を出せば受理してもらえて認証してもらえるという見通しがはっきりあったのだろうと思う。だからこそ名称変更の申請を出した」。そこで働いたのが政治の力だと、前川氏は見る。「安倍(晋三元首相)さんの影は感じます」とも話した。

全国霊感商法対策弁護士連絡会は15年3月、下村文科相らに申請を認めないよう求める文書を送付している。前川氏は「名称変更がどういう社会的インパクトがあるかということは十分分かっていたはず。承知の上でやったとしたら責任は重い」と指摘する。下村氏の事務所は「現時点で(コメントは)出さない」としている。【中嶋文明】