統一地方選の41道府県議選と17政令市議選が3月31日、告示(9日投開票)された。岐阜県議選多治見市選挙区(定数2)は3回連続の無投票から16年ぶりに新人3人が激突する。2021年の衆院選で立憲民主党から出馬(落選)した今井瑠々(るる)氏(26)は1月に電撃離党し、無所属ながら自民党推薦を得た。自公が公認する友江惇氏(36)、無所属の判治康信氏(47)と三つどもえの複雑な構図となった。

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無風から一転、16年ぶりの戦いは県議選ながら注目度は全国区だ。今井氏は前回衆院選岐阜5区に全国最年少25歳で立民の目玉女性候補として擁立されたが、1月に立民離党と自民転身をし、今回の県議選に自民推薦での出馬を表明した。

JR多治見駅前での第一声には自民党の野田聖子前男女共同参画担当相も駆けつけ、テレビカメラ6台と多くの報道陣が動向を追った。落選後も地道に活動を続けた今井氏は昨年12月、超党派の勉強会で野田氏から「立憲民主党のためにやっているの? あなたが実現したいことを実現するために、このままでいいの?」とアプローチされたことを明かし、「党は変わっても、私自身は何も変わっていません」と訴えた。

野田氏は「私の娘です。私も(岐阜)県議選に出たのが26歳の時。30年たったら、こうなります」と自虐ギャグで笑わせ、「私が一目ぼれした」と4日に27歳の誕生日を迎える今井氏を持ち上げた。くすぶる離党批判については、05年の郵政民営化に反対して離党勧告を受け、翌年復党した自らを引き合いに「追い出された人間が戻って来て、大臣やってるんですよ」とフォローした。

同選挙区は3回連続で自民と旧民主党系が1議席ずつ分け合い、無投票が続いていた。今回も自民後継の友江氏、非自民後継の判治氏による無投票が有力視されていたが今井氏の参戦で混戦の構図に。自民党幹部は「2議席取る」と独占を狙う一方で、前回衆院選で11選を果たした自民党の古屋圭司元国家公安委員長としのぎを削った今井氏への遺恨は消えず、「昨日の敵は今日の友と言われても…」と口元をゆがめた。

今井氏は立民から「反党行為」とされ、除名処分となった。ライバル候補の判治氏は前回、今井氏を支援した1人で「裏切り者には絶対に負けられない」と陣営幹部は息巻く。地元の反応も「前回は今井さんに入れたが、決めかねている」(60代男性)など混迷が色濃く、3陣営ともに「横一線」と緊迫感が漂う9日間のサバイバル戦がスタートした。【大上悟】

○…地元出身で自民公認の友江氏(元共同通信記者)はJR多治見駅北口での第一声で、同駅北口に建設予定の同市新庁舎について「80億円の予算があれば、子育て予算を拡充できる。今この場所に新しい庁舎を作るよりも子育て予算や道路整備の予算に使う方が市民の幸福につながると確信している」と計画の白紙撤回を訴えた。応援に駆けつけた古屋圭司衆院議員も「全国の例を見ている私としては100%賛成します」と賛同エールを送った。唯一の公認候補だが、今井氏の参戦で「かなりの接戦」(陣営関係者)と緊張感をあらわにした。

○…旧民主系無所属の判治氏は地元企業に勤務し、4人の子どもと5人の孫がいる庶民派をアピールする。「子育ての経験、社会で学んだ経験、他の候補者にはない。市民の目線で生活者の目線で、みなさんの思いを聞ける」などと訴えた。前回衆院選で今井氏を支援した連合岐阜などの支援を受けるが、陣営幹部は「今井瑠々の名前は聞きたくもない」と吐き捨てるように言うほど敵視する。昨年秋に県政挑戦を固めた判治氏について「まだまだ無名」とした上で同幹部は「自民の組織票が二分され、公明票がどのくらい動くのか。特殊な選挙だ」と見据えた。