次世代型電動モビリティーの電動キックボードに1日施行の道交法改正で「特定小型原動機付自転車」と「特例特定小型原動機付自転車」が誕生した。16歳以上で運転免許は不要で「特例特定小型原動機付自転車」は時速6キロで歩道走行も可能となった。モビリティー推進議連の朝日健太郎参院議員(47)が試乗して新しい移動手段としての将来性や課題をチェックした。【大上悟】
時速6キロで歩道走行
道交法改正で国交省が保安基準の適合性を確認した「特定小型原動機付自転車(特定)」は4社9車種(6月12日時点)ある。この特定モデルをベースに時速6キロで歩道走行するために必要な保安基準に適合した「特例特定小型原動機付自転車(特例)」がある。
今回は「モビリティと交通の新時代を創る議員の会」(MaaS推進議連)メンバーの朝日健太郎氏に国会議事堂周辺の歩道や車道を試乗テストしてもらった。試乗したのはホンダ発のベンチャー企業「ストリーモ」の「特例」モデル。最大の特徴は走行安定性を高めるために後輪が2輪の「3輪車」で停止時は乗車したままでも自立するバランスアシスト(特許取得済み)が装備され、信号待ちなどでも足を着く必要がない。対応身長130~200センチ、最大許容重量が120キロ。元男子バレーボール全日本代表として活躍した199センチ、88キロの朝日氏が停車状態で両手を広げて左右に体を傾けても倒れない。
ホンダ時代に2輪車の研究開発を担当していたストリーモ森庸太朗代表取締役CEOは「停止や危険回避などで足を着くことで不安定になってしまう。足を使って止まるということがなく、止まる瞬間までブレーキに集中できる」とした。また電動キックボードは通常、スタート時に軽く地面を足で蹴って初速をつけた方が安定するが同モデルは電動キックボードなのに「キック」がいらない。
高齢者の新しい足に
国会議事堂周辺の車道を時速20キロまでの「特定」モードで、歩道を時速6キロまでの「特例」モードに切り替えて走行した朝日氏は「スピードの制御も良くできていて、3輪なので安定性が良くて初心者ながら安心して乗れた」とした。また「移動の手段と乗る楽しさ。観光地の移動手段としても有効で高齢者の方々の新しい移動手段としても」と言い、高齢ドライバーの運転免許返納が増える中で新たな需要が広がりそうだ。
ストリーモは今月上旬から「特例」モデル(30万円税込み)250台、原付モデル(30万5000円税込み)50台の計300台の抽選予約を受け付けたが、19日までに、1200件以上の申し込みを受けるなど注目を集めている。
一方で事故やトラブルも懸念される。朝日氏は「問題が出ているのは都市部とか過密地域のところでルールが統制できていない」と言及し、「我々、政治家も導入を決めた責任がある。安心していただける取り組みをしていきたい」とした。「特例」モデルはすべての歩道走行が可能ではなく、自転車の通行が認められた歩道に限定されるが標識が見づらく、確認しにくいなども指摘される。
今回の法改正で運転免許が不要で高齢者の日常的な「足」となる期待値の高いカテゴリーが誕生した。今後の市場拡大は高齢者を含めた利用者に交通ルールやマナーの啓発、周知などによって市民権を確立できるか、どうかがカギとなりそうだ。
■道交法改正後、事故トラブル相次ぐ
警視庁は道交法改正で事故が増加傾向にある電動キックボードについて、ホームページなどで注意喚起を行っている。公道を走る電動キックボードの運転は16歳未満は禁止で「特例特定小型原動機付自転車以外の電動キックボード等は、路側帯や歩道を通行できません」などの注意事項の周知を行っている。
一方で事故やトラブルは相次いでいる。7日、東京・豊島区で運転免許のない男子大学生(19)が運転する電動キックボードが停車しているタクシーに追突する事故が発生した。男子大学生が飲酒運転した疑いがあり、警視庁は道交法違反容疑で書類送検する方針。また大阪府警によると6日、大阪市西区の交差点で電動キックボードとトラックが衝突する事故があり、電動キックボードの運転手の呼気から基準値を超えるアルコールが検出された。
<規模を急拡大:LuuP>
電動キックボードのシェアリング大手「LuuP」は6車種で国交省の「特定小型原動機付自転車」保安基準適合を受けた。6月末時点で東京、大阪、横浜、京都、神戸、宇都宮、名古屋の7エリアに合計3500以上のシェアリングポートを設置しており、2020年5月に電動アシスト自転車のみのシェアリングサービスを開始した際は、東京のみ50ポートと全国的に規模を急拡大している。
交通ルール順守の啓発として利用者がアプリによる交通ルールのテストに全問、連続で正解して合格しないと電動キックボードに乗車できないシステムを導入し、16歳以上であることを証明する年齢確認書類提出も必須としている。
<安全性を向上:長谷川工業(株)>
長谷川工業(株)は特定小型原動機付自転車モデル「YADEA KS6 PRO」(19万8000円税込み)を7月1日から販売を開始した。新モデルの特徴としてモーター出力を「パワーアップして坂道の上りでもスムーズに安定して走行が可能。フロントサスペンションなど走行安定性を向上させた」(PR担当)としている。
同モデルは6月中旬から先行予約をスタートし、7月中旬までに「年間で想定していた販売台数に、ほぼ達した」(PR担当)とし、同社では新たなラインアップを予定している。
<注文想定以上:SWALLOW>
SWALLOW(スワロー)合同会社(https://swallow-scooter.com/)は特定小型原動機付自転車モデル「ZERO9 Lite」(13万9800円税込み)を5月下旬から販売した。「小型でありながらパワフルなモデルを目指して認可を受けた。想定以上の注文をいただいている。7月、8月分は完売し、9月発送分を受け付けている」と金洋国代表。同モデルは「特例特定小型原動機付自転車」ではなく、歩道走行はできない。「特例モデルは今のところ考えていない。すべての歩道で走行できないので実用的ではないと判断し、特例に必要な装備品などを省くことでコストカットを図っている」(金代表)としている。
◆朝日健太郎(あさひ・けんたろう)1975年(昭50)9月19日生まれ、熊本市出身。法大卒。バレーボール全日本代表として法大、サントリーで活躍。元ビーチバレー五輪代表。16年7月の参院選(東京選挙区)に出馬して初当選。20年に菅内閣で国交相政務官。当選2回。

