岸田文雄首相が29日、急速に強まり始めた「解散風」の沈静化をはかった。

政府はこの日、臨時国会を10月20日に召集する方針を与党幹部に伝えたが、補正予算案を提出するかどうか明確にしなかったため、首相が補正予算案を提出せず、臨時国会召集日の「10・20解散」に踏み切るとの見方が拡大。これを受けて首相は夕方、報道陣の取材に、新たな経済対策の財源を裏付ける23年度補正予算案を臨時国会に提出する意向を表明。補正予算案を提出すれば審議が必要なため、臨時国会冒頭解散の臆測を否定した格好だ。

一方で、臨時国会での衆院解散じたいは「経済対策をはじめ先送りできない課題に一意専心取り組む。それ以外のことは今、考えていない」とけむに巻いた。

複数の関係者によると、首相は依然、年内の衆院解散・総選挙を模索しているという。ただ補正予算案提出なら審議開始は11月以降。成立は11月下旬から12月上旬になるとみられ、早くても12月の「年の瀬選挙」となる可能性がある。

ただ岸田内閣の支持率は上昇に転じず、今月13日の内閣改造・自民党役員人事も、政権浮揚につながっていない。首相自身に政治資金処理をめぐる問題が表面化し、複数の閣僚や自民党幹部にも「政治とカネ」問題が浮上。臨時国会で国会論戦が始まれば、野党の追及は避けられず、「資質」を問われる閣僚も出かねない。与野党対決構図となる来月22日投開票の衆参2補選も自民党に有利な状況ではなく、関係者は「今解散しても、与党には追い風ではなく逆風」と警戒する。

今年は「阪神タイガース優勝の年には解散・総選挙がある」という「政界ジンクス」の該当年ではあるが、首相の腹のうちが読めない与野党とも、万が一に備えて年内解散に向けた準備を進めるしかない。解散をめぐる神経戦は当面、続きそうだ。【中山知子】