藤井聡太竜王(21=名人・王位・叡王・王座・棋王・王将・棋聖)が8冠を堅持した。将棋の第36期竜王戦7番勝負第4局が10、11日、北海道小樽市「料亭湯宿 銀鱗荘」で行われ、先手の藤井が129手でタイトル初挑戦の伊藤匠七段(21)を破って4連勝し、竜王3連覇を果たした。10月の全冠制覇後、初めての防衛戦でもその強さを見せつけ、タイトル獲得を19期連続として、故大山康晴15世名人の記録に並んだ。

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今局のハイライトは、伊藤七段が2日目の再開直後に、敵陣の6筋に銀を打った局面でした。ひと目、8筋の歩を突けば必勝でした。ほかの解説者も同じことを言っていましたし、この手なら早く終わり、伊藤七段が1勝3敗になっていたと思います。第一感で思い浮かぶような手を逃したのはまずいでしょう。将棋は決めるときに決めないと、「勝利の女神」はほほ笑んでくれませんから。

この後、藤井竜王が金と桂で自陣に手を入れて受けたのは見事でした。形勢が逆転してからは攻防ともに「一日の長」があった気がします。やはり、同学年とはいえ、先にデビューしてタイトルを取ったという経験値の差が現れました。

ところで、10月の王座戦で永瀬さんが入念な準備をして優勢な局面を築きました。敗れはしましたが、今局の伊藤七段の研究の深さも目立ちました。これらは今後、藤井8冠と角換わりで戦うための指針になったと思います。

タイトル戦19連勝は立派ですが、最近相手にてこずっている藤井8冠がこれからどんな作戦を練ってくるか。お互いに研究が進めば進むほど、将棋は面白くなります。(加藤一二三・九段)