藤井聡太棋王(竜王・名人・王位・叡王・王座・王将・棋聖=21)が無敗防衛で、自身が持つタイトル戦の連勝記録を「21」に伸ばした。

同学年の伊藤匠七段(21)の挑戦を受ける、将棋の第49期棋王戦コナミグループ杯5番勝負第4局が17日、栃木県日光市「日光きぬ川スパホテル三日月」で行われた。午前9時から始まった対局は、混戦から抜け出した藤井が押し切った。対戦成績を3勝1分けとして初防衛を果たし、8冠を堅持した。

藤井が機敏に動いた。昼食休憩から再開された午後1時過ぎ、2~3筋に伊藤の銀や飛車を配置させると、1筋の角を3筋から8筋へと転換させる。この仕掛けから10戦9勝1分けと相性のいい伊藤を封じた。約1年前、渡辺明棋王(当時)からタイトルを奪取して史上最年少6冠となったのと同じ、縁起のいい対局場で初防衛となった。

タイトル戦で全国を転戦する藤井は、静岡県で7戦7勝と抜群の相性の良さを誇る。次は北海道と京都府の5戦5勝。千葉県、徳島県、石川県と並び3戦3勝だった栃木県で、単独4位となる4戦4勝とした。

前日移動では、東武鉄道が昨年7月に運行を始めた「スペーシアX」に乗って最寄りの鬼怒川温泉駅まで来た。「楽しくやってくることができました」。前夜祭で笑った翌日は、対局で笑った。

この日放送されたNHK杯決勝では連覇を目指したが、佐々木勇気八段に敗れた。この1敗が影響して本年度は46勝8敗(勝率8割5分2厘)で終了。1967年(昭42)度、中原誠五段(当時)が記録した年間最高勝率記録の8割5分5厘(47勝8敗)には、わずかに及ばなかった。

中原超えはならかったが、羽生超えは果たした。8冠を堅持したことで全冠保持日数は、96年に達成した羽生善治7冠(当時)の168日(2月14日~7月30日に棋聖失冠)を抜くことが確実になった。昨年10月11日に8冠となって以来、次のタイトル戦として来月から始まる名人戦で仮に4連敗しても、5月19日までの222日は保持できる。

次の目標はもちろん、名人初防衛。4月10日から豊島将之九段の挑戦を受ける。8冠防衛ロードは新年度へと移る。