盛岡市動物公園ZOOMOで生まれたピューマの誕生からの軌跡を記録したフォトブック「ピューマのかぞく」(辰巳出版)が反響を呼んでいる。 

昨年6月10日、ピューマのオス「タフ」とメス「ニーナ」のもとに5頭の赤ちゃんが誕生した。

国内で例を見ない5頭の出産。ピューマを通算10年ほど担当する飼育係の山本祐子さんは「もちろん5頭の誕生は喜ばしいことではありましたが、全ての赤ちゃんが小さく生まれたのはぱっと見で分かったので、全頭は無事に育たないかもしれないなという不安は最初の時点でありました」。その心配は現実となり、そのうちの2頭は生後3日で天国へ旅立ってしまった。だが、メスの「キャフ」とオスの「ツィー」「シェダル」の3頭は人工哺育や度重なる困難を乗り越えながら懸命に生きた。ひときわ小さく誕生したメスのキャフは一番長い人工哺育期間を過ごしたが、山本さんをはじめ飼育係や獣医師によるケア、母性の強い母ニーナの受け入れもあり、生後半年がたつ頃には無事に子ども3頭と母親が食事をするときも、寝るときも、行動をともにできる家族のかたちになった。ツィーとシェダルは父タフに似ておおらかに。生後すぐに生死の境をさまよったキャフも今では「いちばん小柄ながらオス2頭を圧倒して遊んでいます」というほど、母譲りのおてんばに育った。

そんなピューマの親子の様子を山本さんは「生まれてきた命に寄り添って欲しい」「動物たちの様子、スタッフの思いを正しく伝えたい」という思いから、誕生当初より半年間、SNSで毎日発信した。心を動かされた人々が日課のように見守り、エールを送った。

今回のフォトブックは、ファンのひとりでもあった同出版社の編集者・小林さんの声から誕生。動物園の飼育係や来園したファンが撮影したありまのままを切り取った写真が収められている。山本祐子さんは「ピューマたちには本当にいろいろなことがあったけど、その『いろいろ』も含めて応援してもらったことが多かった」と振り返る。その上で「個性の強さを写真に収めてくださる方も多かった、ピューマの家族1頭1頭の個性を出すような写真を選んでくださったことで、美しいだけの写真集ではなく、本当にこの家族を象徴する写真集ができたのだと思います」と感謝を込めた。

この「ピューマのかぞく」にはピューマの家族の成長過程のみならず、飼育係の葛藤も描かれている。「飼育係に憧れや華やかなイメージを持っていただくことが多く、それは大変うれしいことではあるのですが、一方で実際飼育係ってそんなに華やかなものではなくて、ちょっと泥臭い部分があったりとか、動物の死に直面することもある。そういった中で私たちが何を伝えられるのかというのが、一番大事にしているところ。飼育係の役割としては担当動物を健康な状態で皆さんに見ていただくことが第一。動物の命と向き合い、考え、悩み、いろいろ工夫しても良い結果にならない時もある。そのような現場の空気を想像したり、感じたりしながら、動物に関しても私たちに関しても本当の姿を見てほしいと思っています」。このフォトブックには「動物や動物園、飼育係の仕事を正しく伝えたい」というSNS発信を始めた頃の山本さんの思いも込められている。

ピューマのどもたちは今秋をめどに同施設から別の施設に移動することが想定される。山本さんは「一番は親子がそろっているうちに会いに来てほしい」と願いを込めながら、一つの家族をきっかけにさまざまな動物の生態やストーリーに触れて欲しいという思いもある。「動物たちにも個性がある。動物園を訪れたら、動物をちょっとだけ見て通り過ぎるのではなく、ぜひじっくりと観察していただいて、動物それぞれの個性を見ていただけると動物園がもっと面白くなると思います」と語った。

「ピューマのかぞく」は定価1980円(税込み)、全国の書店、ネット書店にて発売中。ピューマの家族と、一家を支えた飼育係の濃密な月日の記録をぜひご覧ください。