ロブチェン(牡、杉山晴)で史上初の牡牝3冠制覇に挑む松山弘平騎手(36)の真骨頂とは-。その名も「松山弘平の凄さ」と題した連載で、親交の深いホースマンたちを取材した。最終の第4回は、バレットを務める姉・侑梨加(ゆりか)さんが、一番近くで見てきたからこそわかる“天才”ぶりを明かした。周囲への感謝と積み重ねて身につけた自信で偉業に挑戦する弟を、2人だけにしかわからない距離感で送り出す。

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弟・弘平の人間性について、侑梨加さんは一言で表した。

「心配りの天才」

姉として、単なる「優しい」だけではまとめきれなかった。「常に周囲の人を気にかけて“今この人にこうしてあげたら喜ぶだろうな”というのを行動に移せる人。それができるのは、普段から周りをよく見て、相手の気持ちを考えているからでしょうね」と観察力を理由にあげた。

その天才ぶりが、今の充実度に直結する。7年連続年間100勝、G1も昨年、今年と3勝。依頼も増えるが「常に周囲への感謝の気持ちがある。どれだけ結果を残しても、今の環境を当たり前だとは思わないタイプ。多くの方に支えられて今があるという思いが強いので、これからもおごることはないと思います」。ひたむきな誠実さが、周囲をとりこにする。

託された手綱を通して、自信もついた。2冠がかかったダービーでも、落ち着いた様子だったと明かす。「この数年で大舞台での経験を重ねて、精神的に強くなったと感じます。成功体験の積み重ねで、自分のことを信じられるようになったかな」。ダービー制覇後もコンスタントに活躍し、9月には4週連続重賞制覇も記録。心身の円熟味が増してきた。

不安な時は、2人で乗り越えた。デアリングタクトで牝馬3冠がかかった秋華賞は、当日の朝から緊張する様子が伝わった。「弘平が緊張していて私も緊張した。どうすれば自信を持てるかな、と心配して…」。そこで“メンタルが100%だから”と声をかけた。「聞いているかどうかはわからないけど、姉弟だから言えるというか。当時は私もいろいろ考えていたかもしれない。声をかける回数より、内容を意識しました」と献身的に支えた。

貴重な日々を経て、自然体の境地にたどり着いた。「やっぱり姉弟なんで、自然が一番いい。今はこっちが言わなくても自信が伝わる。私もそこを信じている部分が大きいです」と弟の成長に目を細める。ダービー当日も特別な会話はなかった。だから今回も「伝えることはないのでは、と。よっぽど不安になってきたらわからないけど、いつも通りを心がけているので」。周囲に愛され、たくましくなった弟と、見守って支えた姉。言葉を超えた2人の距離感で、偉業達成に挑む。(おわり)【深田雄智】

◆松山侑梨加(まつやま・ゆりか) 兵庫県神戸市出身。競馬関係者がいない家庭で育つ。大学卒業後、騎手デビュー2年目を迎えた弟・弘平の誘いでバレットをはじめる。バレットとはレース当日に騎手の身の回りや馬具の世話などを行うサポート役。以来、自身の事業と両立しながら、週末は競馬場で弟を支える。