新型コロナウイルスによるパンデミックが始まってもうすぐ1年を迎えようとしていますが、ロサンゼルス(LA)では今月に入って感染者数が劇的に減少しています。昨年11月末の感謝祭から新年まで続いたホリデーシーズンに伴う人の流れや集まりで急増したピークが過ぎたことが大きな要因だといわれていますが、1月初旬には1日の平均新規感染者数は1万5000人を超えていたのが、現在は2000人を切る日が3日連続するほど激減。一時は病院の集中治療室(ICU)の空き病床は0%となり、1つの人工呼吸器を患者2人で共有せざるを得ない病院もあったほどでしたが、医療現場も落ち着きを取り戻しているようです。

ベニスビーチを歩く人たちもマスク姿
ベニスビーチを歩く人たちもマスク姿

それでも、1日の死者数がいぜん100人を超えているLAでは、まだコロナ禍以前の日常生活には程遠く、現在も映画館やテーマパーク、美術館(屋外展示を除く)など娯楽施設は閉鎖されたままですし、飲食店での店内飲食も禁止されています。このまま減少傾向が続けば経済活動の再開も視野に入ってきますが、昨夏に減少したことからガードを下げて秋から冬にかけての感染爆発を招いた過去があるだけに、まだまだ気が抜けない日々が続くとみられています。さらに、カリフォルニア州では英国型とは異なるウエストコースト変異株と呼ばれる新たな変異株が広がっていることも懸念材料で、より感染力の強い変異株への警戒も必要となってきそうです。

LA郡では先日、公立小学校の対面授業再開を許可することがようやく発表されましたが、米国内で2番目に大きなロサンゼルス統一学校区は教員やスタッフ全員がワクチン接種を終えるまでキャンパスをオープンしない姿勢を示しており、学校再開にも暗雲が立ち込めています。ワクチンの供給に遅れが生じて接種がなかなか進まないLAでは現在、65歳以下の教員へのワクチン接種はまだ始まっていないことから、ワクチンの確保と接種拡大が急務となっています。

メキシコ系住民も多いLAではスペイン語でマスク着用を促す看板も
メキシコ系住民も多いLAではスペイン語でマスク着用を促す看板も

バイデン大統領は先日行われた就任後初となる一般市民との対話集会で、7月末までに全国民がワクチン接種できる見通しだと語り、クリスマスまでには以前のような生活に戻れる可能性にも触れていましたが、一般のワクチン接種には時間を要することから、当面はまだマスク着用とソーシャルディスタンスが求められています。バイデン大統領は国民全員にマスクを配布することを検討していると報じられていますが、このところメディアなどで「ダブルマスク(二重マスク)」が話題になっています。政府のコロナ対策の中心人物として知られる米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長が「予防効果を持つ可能性がある」との見解を示したことから注目されたダブルマスクとは、言葉通りマスクを2枚重ねて着用することを意味します。米疾病管理予防センター(CDC)も10日に二重マスクは効果があるとする実験結果を発表したことから今後は二重マスクがスタンダードになってくるかもしれませんが、単に二重にすればよいわけではなく、着用方法には注意が必要だといわれています。

LAではマスク着用していないと店舗に入ることができません
LAではマスク着用していないと店舗に入ることができません

まずは使い捨ての医療用マスクを着け、その上から布製マスクを重ねなければなりません。そして一番大切なのは、隙間を作らずに鼻と口元を覆ってぴったりとフィットさせることだといいます。つまりは、使い捨てマスクだけではどうしてもできてしまうマスク脇の空間を上から布マスクをつけることで顔にぴったりとフィットさせることでウイルスの侵入を防ぐことができるということのようです。従来のものより感染力が強い変異株から身を守るために推奨されているダブルマスクは、買い物など屋内で不特定多数の人と接する機会がある場所でするとより有効だとする専門家も多く、時と場所によってマスクの着用方法を変えることが感染予防におけるニューノーマルとなってくるのかもしれません。

学校を再開させるためにマスクをしようというキャンペーンも
学校を再開させるためにマスクをしようというキャンペーンも

LAでは地域で差はあるものの、普段の生活で出かける範囲に限ってみても、ほぼ8~9割の人がマスクを着用しています。1年前にはマスクを着用している人は皆無だったことを考えると驚きですが、マスクはもはやアメリカ人の生活の一部となりつつあるようです。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)