JR東日本はこのほど、3月13日から「タッチで駅ナカ」を開始すると発表しました。入場券として利用できなかったSuicaなどICカード乗車券で入場サービスを行うもので、JR東日本のSuicaエリアで適用します。これまで券売機や窓口で購入する必要があった入場券が「ピッ」という音だけで済むのですから便利になったといえます。今や改札口内は見送りや出迎えだけでなく、買い物や飲食の場にもなりつつあり、それをふまえたサービスともいえそうです。

さて、よく読むと、このリリースには注釈があります。「Suica定期券区間内の駅では本サービスはご利用できません」。今回の本題はこちら。説明していきましょう。(写真1)

〈1〉大阪駅の入場券。発売から2時間有効というのがポイント
〈1〉大阪駅の入場券。発売から2時間有効というのがポイント

通学や通勤に使う定期券というのは、ある意味便利なものです。仮にA駅からC駅までの定期券を持っていた場合、途中にB駅という、よく行く繁華街があれば休みの日でも利用できます。ですが意外と勘違いしている方が多いのは「入場券としては利用できない」こと。例を挙げると、お手洗いが近くに見当たらず、A駅のトイレを借りて出ようとしても出られません、ということ。1度入場したのだから、定期区間内の、お隣のa駅まで電車に乗って改札を抜けて再び入場。A駅まで戻ってきて初めて「合法」となります。

大変面倒くさそうですが、これは定期券の正式名称が「定期乗車券」だからです。最初に挙げた交通系ICカードも「ICカード乗車券」なので入場券として使えませんでした。乗車券は列車に乗車するためのもの、入場券は駅構内に入るものです。紙の切符に置き換えると分かりやすい。東京駅の入場券は140円。でも140円の乗車券は別に販売しています。駅の券売機では間違えないよう分かりやすく表示されていることが多い。(写真2)

〈2〉乗車券(きっぷ)と入場券は別に表示されている
〈2〉乗車券(きっぷ)と入場券は別に表示されている

さて、ここまでルールとしての原理原則を書いてきましたが、実際の運用はそうでもないというか、もう少し人情味があることも書いておきます。定期券を入場券として使うというか、使わざるを得ない場面はあります。最も多いのは忘れ物でしょう。駅の改札を抜けた途端に「あっ」となった経験は誰しもあるはず。私もあります。

この場合は駅員さんのいる改札まで行き、その旨を話せば、切符の場合は「はい、どうぞ」と出してくれて再入場時は、また駅員さんのいる改札を抜けて…と、厚意に甘えることが多いのではないでしょうか。ではIC定期券の場合はどうでしょう。もちろん全鉄道会社で定期券を利用したわけではないので、過去に利用したことのある数社だけですが、この「あっ」という忘れ物レベルでは、改札機が閉じることなく普通に出場できました。

あくまで推測ですが、このような「うっかりさん」を対象に一定時間を設定して再入場ができるようにしているもようです。記事の前半で「意外と勘違いしている方が多い」と記しましたが、平素こうした特例に助けられていると思われます。

※定期券はあらかじめ乗車経路が決められているので、いわゆる選択乗車はできない。つまり大都市近郊区間における大回り乗車(2019年12月26日の記事をご参照ください)もできません。