内房・保田(千葉)の黄金アジがうまい! 東京・築地で最も歴史のあるすし店「築地寿司清」の本店店長が保田「村井丸」でサオを出して、自ら釣ったアジを握ってみた。いわく「脂の乗り具合が絶妙。包丁を入れた瞬間においしさが約束されていた。素晴らしい」と大絶賛。これから夏にかけて、黄金アジは本番を迎える。

 ふとしたことがきっかけだった。

 日刊スポーツでは、毎年元日に「築地50店舗のお年玉プレゼント」という紙面企画を実施している。創業126年の歴史を誇り、食の町・築地で最も古いすし店「築地寿司清」の広報担当との会話で「タコボウズさん、釣りの担当なんですか、ウチに釣り好きがいるんですよ」と。そこから「釣った魚を握る」という体験型コラボ紙面が半分冗談でたち上がった。

 ならば、旬の魚にしようぜ! …ということで、これから匹数もサイズも、グングン上昇していく保田のアジにチャレンジしよう、という方向になった。

 これは興味深いぞ!

 東京湾のアジは、おいしい。特に内房のアジは、評価が高い。保田の「黄金アジ」、金谷の「金アジ」など、青空を背景にするとキラキラと宝石のように輝いて、体色が金色に見えるアジが釣れる。もちろん、味も絶品だ。

 釣り方は簡単。保田「村井丸」では、ハリに飾りの付いたウイリー仕掛けを使う。アジの注目を引くのだ。3本バリのケースが多く、一番下のハリは飾りがなく、オキアミの尻尾をちぎって、頭部を垂らす。残りのハリにはイカなどを刺して誘う。初心者にも手軽にできる釣りとして人気も高い。

 寿司清からは、本店の国司(くにし)大輔店長(35)と、子どものころから遠州灘で釣りをしていた田中柊蔵(しゅうぞう)さん(20)が送り出されてきた。いざ、勝負!

 ただ、この日はアジの食いが渋かった。水深20~70メートルの底から5~10メートル浮いたところでヒットしたが、群れがすぐ消えてしまう。タナ(魚の泳層)から外れるとまったく反応しない。ピンポイントで攻めないとアジはファイトしてくれなかった。

 それでも、志村秀行船長の指示するタナに40号のコマセカゴを置いてくると、ブルン、ブルルン、とアジのアタリが連発した。浜からの投げ釣りを得意とする田中さんが一荷でアジを釣り上げ、1キロ超のアマダイをゲットして着実に釣果を伸ばしていった。「アタリが細かいですけど、そーと優しくタナに合わせるとブルンときます。面白いです」と田中さんは白い歯をみせた。

 一方の国司店長はやや苦戦。トラギスやサクラダイに好かれていたが、タナを微調整して大きなアジがヒットした。「一瞬、何も釣れないのかと思った。海は気持ちいいですねぇ」と目を見開いた。船上で血抜きをしてシメて、築地に持ち帰った。

 やはり、うまい。内房のアジと築地の名店のコラボずし。20センチ前後のやや小ぶりなアジの脂乗りが舌の上でとろけそうだった。国司店長は「素晴らしいアジですね。数時間前まで海で泳いでいたんですもん。コリコリだけじゃなくて、ほどよい甘み、深みがある。包丁を入れるときの弾力が『うまいぞぉ~』と叫んでるように聞こえましたね」と、保田のアジをベタホメした。【寺沢卓】

 ▼船 保田「村井丸」【電話】0470・55・1121。ライトタックル(LT)アジは午前5時集合、同6時出船で、氷、コマセ付きで9000円(付けエサ別)。そのほかマダイ船も好釣。