今年の千葉・金谷の磯、特にクロダイは最高のシーズンだった-今月6日、冬から春を駆け抜けた内房クロダイの金谷地区決勝大会が行われた。予選通過した14人が熱戦を繰り広げ、中学2年から通い続けている森広幸さん(44=富津市)が53・7センチで初優勝した。

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金谷の磯クロダイは、2月1日の開幕とともに戦いが始まり、決勝前日の5月5日まで1匹の全長勝負で熱い予選が展開された。2016、翌17年を2連覇した川口勇治さん(57=佐倉市)が今月3日に46・8センチを記録してギリギリの14位に滑り込めた。「年が分からないぐらいにデカい」とクロダイの大きさの指標となる50センチ超のことを「年無(としなし)」と呼ぶが、その年無が6匹も出た。金谷「岡澤釣具店」の岡澤裕治親方は「レベルの高い予選だった」と思い返した。

その勢いがそのまま決勝に出た。風が強く、底も荒れて状況は悪かったが、優勝した森さんが53・7センチ、重さは2・64キロの大物だった。2位の内田勝蔵さん(75=君津市)も午前中に52・2センチ(2・01キロ)を釣り上げ、場所を変えた午後は50・6センチ(2・19キロ)をキャッチした。

森さんは、決勝前日の5日も、様子を見るために二間(ふたま)に入っていた。決勝では午前と午後で場所替えをする。渡船前にくじ引きをして、数の若い順番から選ぶことができる。森さんの午前のクジは「2」。二間を選ぶことができた。早い潮が沖からぶつかってきていた。コマセに小さいメジナが寄ってくるので、足元にコマセを集中させた。沖にクロダイが潜んでいる気配は感じていたこともあり、丹念にちょい投げして午前9時に優勝魚をヒットさせた。

森さんは中学2年から父昭さん(69)に連れられて、金谷の沖磯に乗っていた。中学生を珍しがって、常連にかわいがられた。その中に今回の決勝競技副委員長の飯村健治さんもいた。

飯村さん もうね、おやっさんによく面倒をみてもらって、釣りを覚えた。恩返しじゃないけど、広幸にも教えたなぁ。それが決勝で優勝したかぁ~、こっちが感無量です。

同競技委員長の鵜澤政則さんは「はっきりいってシブい状態だった。その中で魚を釣ってきたのはスゴい。50センチではなかったけど、3位の渡辺さんもたいしたもんだ」と参加選手をねぎらった。

優勝した森さんは「内田さんが開始まもなく釣っていて、そのときに55センチと伝わってきて、ビビりました。53・7センチ、って自己記録更新なんですよ。だから、ついてないなぁ、と思っていた。でも、勝負は自分の目でちゃんと見てから。本当に良かったです」と胸をなで下ろしていた。冷静に前の日から海を観察していたことが優勝の下支えとなったようだ。【寺沢卓】

◆賞 優勝した森さんにはクリスタルトロフィーと賞状のほかにがまかつ提供の「がま磯 チヌ競技スペシャル306-53」(7万4500円相当)や、マルキユー提供の「パワーバッカンセミハード40TR4SB」(8000円相当)や液晶テレビ、カニ缶セット、新米5キロなど豪華副賞が贈られた。箱根湯本「吉池旅館」ペア宿泊券はじゃんけんを勝ち抜いた佐藤徹さん(51=千葉市)が引き当てた。