アオリイカのティップランが面白い。千葉・富浦「共栄丸」(笹子宏宣船長=49)では、午後船で楽しめる。魚に似せた和製ルアーの「餌木(エギ)」を落とし込んで着底させたら、3~5メートルほどリールを巻き上げてシャクる。起伏の激しい岩礁地帯で、獲物の小魚を狙って触腕を伸ばすアオリイカを乗せる。これから寒くなるにつれ、ひと潮ごとに大きくなる。キロ級の大物も夢ではない。

ズンッ! アオリイカが餌木に乗った感覚が手元に伝わる。手首を返してロッドを思い切り立てて合わせ、一定のスピードでリールを巻く。現れた獲物は時折、ブシャーッと海面からスミを吐いて抵抗しながら、タモに取り込まれた。

秋の内房の風物詩として、ティップランはすっかり定着した。シンキングペンシルなどのルアーでのシーバス狙いや、アオイソメなどをエサにするシロギス釣りのように、アンダースローやオーバースローで遠くへ飛ばず必要はない。真下への落とし込みが基本だ。

3・5号の餌木に重さ30~40グラムのシンカー(オモリ)をかぶせて底まで沈める。その後、リールを巻きながら手首を返してジギングのようにシャクリを入れて、3~5メートル上げる。10~20秒ほど漂わせ、再びシャクッたりして誘ってみる。アタリが出なければ落とし直したり、餌木を回収して交換する。

エサとなる小魚が目の前に泳いできたと思わせ、抱きつかせる。餌木の後ろ部分のとがったカンナに足が刺されば、乗った合図。明確に出る。時には「おさわり」と称して、餌木を足で触るだけとか、餌木本体に足を絡めて乗る「ハーモニカ」の状態で上がってくることもある。

開始10分、右胴の間で高橋俊行さん(35=神奈川県川崎市)がいきなり乗せた。ロッドを頭上まで立てるしっかりした合わせで次々と乗せ、4匹を記録した。会社の先輩、竹内誠さん(48=川崎市)も続く。こちらは5匹でサオ頭。「同じようなサイズがそろった。型がそろっている感じ」と声をそろえた。納竿寸前にはダブルヒットも見せてくれた。右トモ(後方)2番手で、竹内さんと同じ5匹ゲットの田村俊明さん(46=千葉県市原市)は、「アタリを出すため、シャクリの回数や角度などを考えながら誘う。毎回パターンが変わるのが楽しい」と話してくれた。

釣行の際は午後の上げ潮時で、伊豆大島方向から湾奥へと潮は流れていた。風は北から時折、強く吹く。右ミヨシの金枝広幸さん(55=同浦安市)は、波立って餌木を安定させるのに苦労しながら3匹確保した。「船が揺れて穂先が安定しなかった。道糸をしっかり張ってテンションをかけながら誘った」。常に餌木の状態を把握していた。

終了間際には高橋さんの後ろにいた山田展本(のぶもと)さん(35=同習志野市)が落とし込みの最中に乗せた。活性が上がってきた証拠だ。「タイミングが良かった」と笑った。

10月下旬は800~900グラムが主力だった。「寒さが増せば、ひと潮ごとにアオリイカは大きくなる。1キロを超えるサイズも乗る」(笹子船長)。高級おかずを調達しに行こう。【赤塚辰浩】

◆アオリイカ ヤリイカ科アオリイカ属。水深100メートルよりも浅い岩礁地帯や藻場(海藻が生えている場所)に分布する大型のイカ。胴の長さは大きいもので50センチ、重さ2キロを超える。成魚は弱った小魚などを足で捕まえて頭からかじるように食べる。アオリは漢字で「障泥」。馬の鞍の側面下部分にある泥よけの馬具に似ていることから、名付けられたとされる。外見がバショウの葉っぱに似ていることから「バショウイカ」などの別名も。甘くて肉厚な刺し身は、イカの中でも最高級だ。

<注意事項>

◆餌木の基本色 内房のアオリイカでは紫系、青系は大本命カラー。ほかにオレンジ、赤などがあるといい。ルアー釣りと同じで、潮が澄んでいればナチュラルカラー、濁っていれば派手な色を選ぶ。

◆歯ブラシ プラヅノで乗せるスルメイカ、ヤリイカ釣りと同様、スミは大敵。餌木のカンナ(後ろのとがった部分)にスミが付着していると、乗りが悪くなる。歯ブラシに海水を浸して汚れは取る。

◆タモ取り 無理して引き抜かない。こうすると、スミを吐いてしまう。乗ったら船長に知らせ、海面に出てきたらタモですくってもらう。スミで船べりなどが汚れたら、バケツにくんだ海水をまいてブラシなどでこすると取れる。

▼釣り宿 富浦「共栄丸」【電話】090・7244・0460。アオリイカは集合午後1時、出船同1時30分、氷付き7500円。午前便マダイは出船6時、コマセ・氷付き1万1000円。電話予約制。※コロナ対策のため、マスク着用。出船前の検温にご協力を