「睡眠時間が足りない」「寝つきが悪い」など、日本人の3人に1人は、睡眠に何らかの不満をもっているそうです。

 医学的には、人が最も長生きできる睡眠時間は、7~8時間だといわれており、1週間に換算すると、49~56時間の睡眠となります。平日に平均睡眠時間が6時間しか取れなかった人は、週末の2日間で20時間眠れば帳尻が合う計算になりますね。

 ところが、これはそうはなりません。米ペンシルベニア州立大学医学部の研究チームは、「週末の寝だめで平日の睡眠不足を挽回できるわけではない」ことを発表しました。眠気の回復は認められてもパフォーマンスの回復は認められず、しかも、寝不足の翌日から体の中に炎症反応(たとえば、動脈硬化などの、心筋梗塞や脳卒中につながる病変)が生じることが分かったのです。

 平日の睡眠不足を補うために、日曜日の朝にいつまでも寝ているなど、週末は長く眠るといった毎週の睡眠スケジュールの変化は、体内時計を狂わせることにつながり、健康問題を引き起こす恐れがあるのです。ですから、日曜日だから遅起きなど、他の曜日と変わったことをしてはいけません。どうしても睡眠不足を補いたいのであれば、日曜日の夜に早寝するのがいいでしょう。

 睡眠不足のときなど、経験する現象として「金縛り」がありますよね。何か、怪奇的なものという印象もあります。金縛りのときには、体を押さえつけられているように感じますが、これは夢の1つで、脳の錯覚と考えていいでしょう。

 医学的には「睡眠まひ」と呼ばれています。睡眠中に、全身の力は抜けているのですが、眠りが浅くなって目が覚めている状態に近くなるときがあります。体は寝ているが、脳が目覚める状態です。その状態では、力が入らないので呼吸が止まったり、息苦しさを感じたりすることがありますが、そのようなつらい体験を、脳が錯覚して、あたかも、体を押さえつけられていると、勘違いしてしまうのです。

 睡眠不足や不規則な生活をしていると起こりやすい。ちなみに、国際的には、亡霊、悪魔、魔女、宇宙人、妖精が起こすとも信じられているが、そんな事実はありません。

 ◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビではコメンテーターのほか、「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)など人気番組の医療監修も数多く務める。著書は「今すぐ『それ』をやめなさい!」(すばる舎)「ダイエットはオーダーメイドしなさい!」(幻冬舎)「ねぎを首に巻くと風邪が治るか?」(角川SSC新書)など。気分転換は週2回のヨガ。