認知症の原因で最も多いのが、アルツハイマー型で50%。以下、レビー小体型20%、脳血管性15%と続きます。このうちアルツハイマー型の予防に関して、いろいろなことが分かってきています。

まず、人と接して、会話を楽しむこと。1人暮らしで引きこもりの人など、対人接触が乏しい人は、アルツハイマー型認知症の発症率が、8倍高くなると報告されています。

食生活では、魚を食べることが効果的とされています。1日1回以上、魚介類を食べる人に比べ、ほとんど食べない人は、アルツハイマー型認知症の危険が5・29倍に高まっているのです。これは魚に含まれている、不飽和脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)によるものと考えられています。

生活様式では、本を読んだり、楽器を演奏することが予防にはいいとされています。本を読む習慣のない人を100%とすると、本を読む習慣のある人の危険度は、65%に減るという報告があります。同じく、チェスなどのゲームをする習慣のある人、楽器などを演奏する習慣のある人の危険度は、20~30%に減るということです。知的刺激を受ける機会が多いと、脳の働きが衰えないということでしょう。

短時間の昼寝も、効果あり、です。30分以内の昼寝で、アルツハイマー病になるリスクが5分の1になるという報告があります。ただし、60分を超えると、逆に発症率を高めると言われています。

適度のお酒がアルツハイマー病予防に効果があるとも報告されています。いいですか、あくまで適度! ですよ。量を超えると、逆に危険を高めてしまいます。ビールだと、1週間で1~6本、すなわち1日1本以内が、認知症予防に効果的と言われています。特に、ポリフェノールを含んだ適量の赤ワインがいいようです。ただし、飲み過ぎると、アルツハイマー病になりやすくなるので注意が必要です。

また、同様の報告によると、1年間に2回以上酔いつぶれる経験のある人は、そういった経験のない人に比べて、10倍も認知症になる危険性が高い、ということです。昼寝も、お酒も、「ほどほど」が肝要なようで…。

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務める。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。