前回の連載では、電気スパークと心房細動の関係を、寒冷地でのかつてのイグニッションキーとエンジンの始動の関係に例えました。発作性心房細動は冷えたエンジンではすぐエンストを起こすように停止しますが、持続性の場合は温まっているエンジンのように止まることはありません。心房細動がいったん止まっても、新たに1、2回のスパークが起こるとすぐに作動して止まりません。

そのような十分に“温まった心臓”では、心房細動がいったん起こると発作性ではなく、持続性となることが散見されます。これを電気的リモデリングと呼びます。電気刺激が繰り返し心房筋に流れることで、筋肉の構造や性質が変わってしまうのです。

検診で「去年は引っかからなかったのに今年は心房細動と言われた」とか「昨年も言われたし今年も心房細動と言われた」と指摘された人がいると思います。この心房細動は、既に電気的リモデリングが進行している“温まっている心臓”に起こったケースと言えます。以前書いた心房細動の基盤となる心房筋の傷(変性)と自律神経の過剰刺激が、電気スパークを生んで心房細動を起こして自然に止まり、また電気スパークが…。心房細動が心房細動を生むわけです。

過度の電気刺激(心房細動では1分間で300~400回もの電気が流れ続ける)により、赤みの肉であるはずの心房はどんどん傷んできます。心房筋にスジが入り、収縮もできずけいれんし続けるので、肺から戻ってきたきれいな血液を送り出せなくなってきます。心房がパンパンに張ってだんだんと伸び、しまいには伸びきった風船の様に変形して元に戻らなくなります。心房細動を放置すると心臓はフランケンシュタイン化するのです。