「オールラウンダー」高木美帆(27=日体大職)が1分13秒19の五輪新記録を樹立し、個人種目で初の金メダルに輝いた。冬季五輪で日本勢最多となる1大会4個目のメダル獲得となった。98年長野五輪ジャンプの船木和喜の3個を超えた。銀はユタ・レールダム(オランダ)が1分13秒83で続き、銅はブリタニー・ボウ(米国)が1分14秒61で入った。小平奈緒(35=相沢病院)は1分15秒65で10位だった。

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1000メートルで今季最速の1分11秒83を持つ高木美は、13組に登場した。今大会7レース目。スタートから果敢に飛び出した。力強い滑りで最後の直線も猛スパート。1分13秒19の五輪新記録をマークし、悲願だった個人種目での金メダルを手にした。この種目では前回平昌五輪は銅メダルだった。最終組の優勝候補ボウのレースを見終え、金メダルを確認すると歓喜の涙を流した。

今大会は5種目にエントリー。3000メートルは6位、女子500メートル、女子1500メートル、女子団体追い抜きで銀メダルを獲得していた。中でも金メダルの可能性を高く期待されていた団体追い抜きは姉の高木菜那がラスト60メートルで転倒するアクシデントで、惜しくも連覇を逃していた。中1日で気持ちの切り替えは簡単ではなかったが、今大会最終種目に全神経を集中させ、「長いオリンピック最後の挑戦。全部を出したい」。壮大な挑戦のラストにふさわしい滑りを見せつけた。

これで通算メダル数は7個となり、自身の持つ日本女子の五輪最多記録を更新した。7個は競泳の北島康介、体操の内村航平らレジェンドと肩を並べる数字となった。ちなみに最多選手は体操の小野喬(1952年ヘルシンキ、56年メルボルン、60年ローマ、64年東京)で13個(金5、銀4、銅4)となっている。

1992年アルベールビル五輪で5種目に出場し、1500メートルで冬季五輪の日本女子初メダル(銅)を獲得した橋本聖子を超え、新たな歴史を築いた高木美。その功績ははかり知れないものとなった。