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東京五輪・パラリンピック300回連載

福原愛理事、10月開幕Tリーグでメダリスト育てる

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Tリーグから五輪へ-。世界トップが集結する卓球の新リーグ「Tリーグ」が、10月に開幕する。日本待望の新リーグは、ライバルの中国を超える「五輪選手養成所」になれるか。新理事に就任した五輪団体で12年ロンドン銀、16年リオ銅メダル獲得の福原愛(29=ANA)が、五輪金メダルへ、リーグの展望、未来、そして自身の今後について語った。【取材・構成=田口潤、松末守司】


笑顔を見せる卓球リーグ「Tリーグ」理事の福原愛(撮影・江口和貴)
笑顔を見せる卓球リーグ「Tリーグ」理事の福原愛(撮影・江口和貴)

柔和な表情に隠した覚悟は、力を宿した目を見れば分かる。10月に開幕するTリーグの新理事に就任した福原が、新リーグ発足の意義を強調した。「自分たちが海外に行かなくても、海外の選手が来てくれるのでどんどん強くなることができる。自分の国にいて自分のレベルを上げることができるのは、すごく魅力を感じます。若い選手や小学生が将来、出たいと思ってもらえるリーグになれたらいい」。16年リオデジャネイロ五輪後、競技は休養しているとはいえ、結婚、出産を経て、愛ちゃんが、ついに卓球界に“復帰”する。

選手と理事-。これまでと立場は違う。春先に理事就任の打診があっても即答はできなかった。「自分に何ができるのか」。自問自答する日々を重ねた。答えが出たのは6月下旬。決め手は、「3歳の時から卓球を始め、卓球界に育ててもらって、たくさんのことを教えてもらった。少しでも恩返しができれば。やっぱり私には卓球しかない」との思いだった。

「日本にいながら世界トップレベルの試合ができる」。これこそが、日本卓球界の未来への道しるべになる。今までの日本は、世界的なプロリーグがなく、世界の強豪選手と対戦し、強くなるためには、中国、ドイツなど海外トップリーグに参戦するしかなかった。福原も中学生で世界トップの中国スーパーリーグに参戦している。競技のレベル向上だけでなく、言葉の壁、時差、長距離移動など、競技とはまた違った厳しい環境に身を置いた。長い過程を経て、12年のロンドン五輪団体戦でようやく銀メダルを獲得するまでに成長したが、そこが新リーグの誕生によってクリアになる。

Tリーグは、男女各4チームが参戦する。男子の水谷隼(29)張本智和(15)、女子では平野美宇、早田ひな(ともに18)らの日本トップが出場するほか、韓国、台湾、中国選手など世界トップレベルが続々と参戦を表明している。日本で強くなる下地が出来上がった。「うらやましいですね。整った環境の中で集中して自分を鍛え上げることができる」とメリットを強調した。

リーグ成功が、そのまま五輪金メダルにつながっている。今、日本の高い壁として中国が立ちはだかっている。福原も参戦したスーパーリーグは、Tリーグが理想とするピラミッド型で、中国は国を挙げて強化してきた。年齢も関係なく、ただ強い選手がどんどん上に上がっていける。底辺を拡大すればおのずと選手層が厚くなる。選手層が厚くなれば、練習の質が上がる。中国はそうやって、次から次へとメダリストを輩出してきた。

福原は中国で目の当たりにしてきたからこそ、新リーグは五輪メダルへのチャンスととらえる。今ある日本リーグは社会人チームで、基本的には企業に就職しなくては参戦できなかったが、新リーグには年齢などの制限がない。「実力があってチームが認めてくれれば、簡単に言えば誰でも出られる。五輪は出場が(1カ国)3人。中国はその3人と同じレベルの選手が30人はいる。いろんなタイプの人と練習できるので経験値が上がる。日本もこのシステム導入によって若くて強い選手がどんどん出てくれば、対人競技なので強い選手とやればやるほど実力が上がっていく。そうなれば、日本全体の実力が上がって中国にも勝てるようになる」と打倒、中国へのヒントを探る。

だからこそ、魅力あるリーグ作りが求められることも理解している。「福原愛」にしかできないことは? 「アスリートファースト」(福原)で改革を進めること。就任したばかりで具体策は松下浩二理事長らと熟考を重ね徐々に打ち出していくとはいえ、初めて理事会に出席した7月の会議では、五輪選考のためのポイントを稼ぐ重要なワールドツアーとの日程調整などの提案を選手目線で積極的にした。

開幕戦は相撲の聖地、国技館で行われる。「すごいこと」と話しながら、「どういう風に台を配置するんだろう。照明は大丈夫なのかなとか。お相撲を見に行った時のイメージは、土俵にスポットライトが当たっていて、あの角度から当てるとサーブを出すときはボールは重なるんじゃないかな」と自然と選手の立場になって物事を考える。

また、広い人脈を生かした国内外の選手の勧誘、魅力を発信するため会場で自ら解説するなどの案を頭に巡らせる。また、福原の携帯電話には参戦を希望する選手から相談が数多く寄せられているように、選手からの信頼は計り知れない。「理事の仕事として任命されれば、私にできることがあるなら海外に出て直接、話をしにいくこともあるかもしれない。お客さんにも分かりやすく伝えられれば」。真の「アスリートファースト」、選手に寄り添える理事は、まさに福原にしかできないことだ。

選手と理事の二刀流は今のところ封印する。リオ五輪後、選手としては休養に入っている。現在、練習は「今のところまだ」と話し、復帰の見通しはたってはいない。2年後の東京五輪に関しても、まだ見えてきていない。松下理事長が「理事でも試合に出られるので、ぜひ出てほしい」とラブコールを送ったが、「それこそ松下さんも兼任できるんじゃないですか」と逆、ラブコールで笑ってかわすなど、慎重だ。

兼任は言葉にすれば簡単に聞こえるが、卓球界の未来をも背負う重責を担ったことで、簡単に答えを出せないでいる。そこにも理事としての自覚が伝わってくる。「Tリーグのことがいろいろある。1つ1つやっていきたいなと思う。(選手としては)タイミングが合えば…。でも、五輪はタイミングが合えばといって、出場できるような大会でもない。必要とされているところで頑張りたい」と信じた道を真っすぐに歩いてきた福原らしく、まずは理事としての仕事を全力で全うしていく。

新リーグが新たなムーブメントを起こし、「五輪メダリスト養成」へ。「世界最高峰のリーグにしたい」。愛ちゃんの、卓球界の、壮大な夢が動きだす。


色紙に「世界一のリーグへ!!」と記した福原愛
色紙に「世界一のリーグへ!!」と記した福原愛

◆福原愛(ふくはら・あい)1988年(昭63)11月1日、仙台市生まれ。3歳9カ月から卓球の英才教育を受け、5歳10カ月で全日本選手権バンビ(小2以下)で史上最年少V。04年アテネ五輪で五輪に初出場し、シングルス16強、08年北京五輪シングルス16強、団体4位。12年ロンドン五輪シングルス8強、団体銀メダル。16年リオ五輪シングルス4強、団体銅メダル。同年9月、リオ五輪台湾代表の江宏傑と結婚。昨年10月、長女あいらちゃんを出産。右シェーク・前陣速攻型。155センチ。


■Tリーグアラカルト

◇理念 世界NO・1の卓球リーグの実現。

◇参加 男女各4チームで選手は6人以上。直近、2シーズン以内で、世界ランキング10位以内。または、直近4シーズンで、五輪、世界選手権シングルス3位以内などの実績を持つ選手の加入が必須。監督・コーチは各1人。

◇参加資格 入会金2000万円、年会費1500万円。チーム名には、原則的に地元の地域名を入れる。企業名もOK。

◇期間 18年10月~19年2月。19年3月に男女上位2チームによるファイナルを開催する。

◇リーグ形式 団体戦でホームアンドアウェーおよびチームマッチ方式。A対Bの対戦をチームマッチと呼び、1チームマッチは、4マッチ(シングルス3、ダブルス1)構成。2勝2敗となった場合のみ、ビクトリーマッチ(延長戦)を行う。シーズンの順位は勝ち点によって決定する。

◇対戦方式 総当たり7回戦(各チーム21試合)。

◇育成 競技の普及、強化のため、6歳以下のスクールを持つ。


日刊スポーツが2020年東京五輪・パラリンピックに向けて毎週お届けする300回の大型連載です。ここでしか読めないスペシャルな話題満載です。

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