世界ランキング1位の半井重幸(Shigekix、22=第一生命保険)が、準決勝、3位決定戦で敗れ、メダルを逃した。思い描いた結果ではなかったが、音楽に乗ったリズミカルで華やかなムーブはパリの観衆を魅了。ブレイキンの未来を示した。競技を始めるきっかけとなった4歳年上の姉、半井彩弥(AYANE、26)がその人となりを明かした。

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「周囲からは『ちっちゃいオジサン』と呼ばれていました」。Shigekixの幼少期をそう笑って明かすのは、4歳年上の姉・半井彩弥だ。小学生の時から競技に魅了された2人のホームグラウンドは、ブレイキンの聖地とも呼ばれる「ポンテ広場」。大阪・難波駅の改札前に位置するその場所で、歳の離れた仲間たちと技を競い合った。そこで弟についたあだ名が「ちっちゃいオジサン」だった。好きな食べ物は「タコワサ」という渋さに加え、大人びた言動で周りを驚かせていたという。

「普通の子供だったら、優勝インタビューで『うれしい』とか『楽しかった』って一言で片づけてしまうのが当たり前だと思うけど、重幸は『こうこうこうだから~』と、いつも自己分析をした上で受け答えをしていました」

きょうだいげんかをしても「炎と水みたいな感じ(笑)」で、いつも寄り添うのはShigekixの方。幼い頃から、周囲に、そして自身へ気を配れる性格の持ち主だった。

特別に、運動神経が良かったという訳ではない。「並みだったと思います」とAYANEは振り返る。だが、ブレイキンで重要なファクターとなる「アート=自己表現」は突出するものがあった。「絵を描くのがすごく上手で、センスは元々持っていたと思います」。そして、最も特別だったのは、決めたことを最後までやり通す力。AYANEは「当たり前って言えば当たり前かも知れない。だけど、決めたことに全力をかけられるのはすごいこと」と、同じ競技者として尊敬の念を込める。それは大きな目標に対してだけでなく、日常の1つ1つに表れる。「例えば、2時間練習していても、運動量は周りの倍あったりする」。築き上げた世界1位の称号は、たゆまぬ努力の結晶だった。

きょうだいで移動する際には、Shigekixがハンドルを握る。車中ではたわいない会話に花を咲かせるが、ブレイキンの話になるとそのまなざしは熱くなる。常に口にしてきた言葉は、「五輪でいい成績を残すためには、人が当たり前にやる努力だけでは足りない」。そんな弟の姿に、結果だけではなく「ブレイキンが新たな可能性を生み出せるのではないか」とシーンをけん引する覚悟を感じるという。

「きょうだいという関係よりかは、Bボーイ&Bガールの1人としてリスペクトできる関係値ですね」

金メダルの夢は果たせなかった。それでも、Shigekixはパリ五輪の最後に言った。「何か始めるきっかけであったりとか、夢中になっているものに全力で挑みたいとか、そんなモチベーションを与えられたら、すごく幸せだし、僕が頑張る意味があるかなと思う」。日本選手団の旗手も務め「ブレイキンという業界そのものが認めていただけた」と話していた22歳。敗れてなお、ブレイキンの未来を示した、強い日の丸のエースだった。【勝部晃多】