パリオリンピック(五輪)で、戦いの裏側や勝敗を超えた選手の生きざまなどを現地から伝えてきた日刊スポーツ取材班が、心に残る出来事、言葉を「取材ノートから~パリ五輪編」と題してつづります。
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卓球男子で21年東京五輪団体銅メダルの張本智和(21=智和企画)は、2度目の五輪となるパリで、5回の負けを喫した。「メダル獲得ならず」。そんな表現でまとめられないほど、心が折れては立ち上がり、自分や仲間のために戦った。28年ロサンゼルス五輪へ、必ずつながる歩みを振り返りたい。
1回目の負けは混合ダブルスだった。7月27日の初戦。早田ひなと組む“はりひな”は、前回の水谷隼、伊藤美誠組に続く金メダル候補に挙げられていた。だが、実力未知数の北朝鮮ペアに1-4で敗戦。2日後のシングルス初戦勝利後も、悔しさを隠さなかった。
「1~2日で忘れられるわけがない。でも混合で負けたから、シングルスを2~3倍頑張ろうとは思わない。空回りする。前から(混合)30%(個人)30%(団体)30%と思っている」
2回目の負けはシングルス準々決勝。8月1日、世界王者の樊振東(中国)を追い詰めた。3-3の最終第7ゲーム(G)。7-6とリードも、5連続失点で屈した。4年後を思った。
「オリンピック本番が一番大事だけれど、ここからの4年間で僕が格上にならなければ、メダルはないと思う」
3回目の負けは団体準々決勝。8月6日、台湾戦の第2試合で相手エース林■(■は日ヘンに句の口が二)儒に2-3で敗れた。日本は3勝1敗で4強入りしたが、自らを奮い立たせた。
「ここだけは自分の信念を曲げる。今日のエース対決(の負け)を明日絶対に取り返す」
翌7日、スウェーデンとの準決勝第2試合。エース対決で勝ちきった。これまであえて切り離そうとした過去の敗戦の悔しさを背負い、有言実行で取り返した。だが、チーム2勝で決勝進出に王手をかけた後、仲間が2敗。4回目の負けは、自身に託された最終第5試合で喫した。2G先取後に逆転され、メダル確定に届かず漏らした。
「もう、本当に力が残っていない」
最後の負けは中1日で迎えた3位決定戦。9日、フランスとの第2試合で相手エースに敗れた。2-2で迎えた第5Gで10-7とマッチポイントを握りながら、5連続失点。第4試合での勝利で2勝2敗には持ち込んだが、銅メダルは遠かった。
「一生、悔いは残るけれど、これがスポーツの素晴らしさなのかな。負けがあるから、勝った時にうれしい。そう考えるしかない」
他競技では馬術が日本勢92年ぶりのメダルを獲得。5大会連続出場で48歳の大岩義明は、表彰台で「ようやくここまで来た」とかみしめた。近代五種や飛び込みは初のメダルを手にした。誰もが過去の敗戦や失敗を糧にしてきた。張本は最後の試合後に言った。
「『次こそ』と簡単に言える舞台ではない。4年後、今日以上に悔しい思いをする覚悟を持って歩みたい。僕たちができるのは、頑張り続けることしかない」
努力しても「絶対」はない世界。4年に1度の五輪。その重みに向き合う日々の価値は尊い。【松本航】



