相沢晃(23=旭化成)が27分18秒75の日本新記録で初制覇を果たし、東京オリンピック(五輪)の切符をつかんだ。

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ゴールに飛び込むと、右手を高々と上げて喜んだ。男子1万メートルで相沢が27分18秒75の日本新記録で優勝。東京五輪切符をつかみ、「このレースに向けてこの1年やってきた。結果を出せてうれしい」と喜んだ。

レース中盤の苦しいときにもペースを落とさず踏ん張った。残り約1000メートルで最後の力を振り絞りスパート。所属先の旭化成の先輩にあたる村山紘太が15年にマークした27分29秒69を大きく更新し、「思っていたよりも速く走れた」。それで近況の充実ぶりから記録更新は視野に入れていたと明かし、「練習を積めれば日本記録も目指せると思っていた」と胸を張った。

東洋大4年の今年1月には、箱根駅伝で「花の2区」の区間記録を史上初となる1時間5分台(57秒)に塗り替えた。出雲駅伝3区、全日本大学駅伝3区の区間新を持つ逸材は、実業団に進んでも存在感を示し、先月の九州実業団対抗駅伝では区間新の快走でチームの3連覇に貢献していた。

福島県須賀川市出身。64年東京五輪男子マラソン銅メダリストの故円谷幸吉氏とは同郷にあたり、中学時代は円谷氏ゆかりのクラブに所属。「忍耐」の走りを見せた名ランナーの意思を継ぐかのように、この日の大一番で粘りを発揮した。「ハイペースでどの選手もきつかったと思うが、耐え忍んだことが日本記録につながった」。

円谷氏は64年東京では1万メートルにも出場し、6位入賞を果たした。「自分もトラックで出られたらと頑張ってきた」。偉大な先輩の背中を追いかけ、国立競技場でも全力で駆ける。

○…優勝した相沢のみならず、27分25秒73で2位だった伊藤、そこから約3秒差で3位だった田村までが日本記録を更新と、男子1万メートルはハイレベルな戦いが繰り広げられた。相沢とは学生時代からのライバルの伊藤は「気持ち的には8000メートルからも(前に)いきたかったが、体がついていかなかった」と悔しさをにじませた。一方、東京五輪マラソン代表の大迫も自己記録を更新して6位となり、「最後まで走りきって自己ベストを出せたのは良かった」と納得顔だった。

<相沢晃(あいざわ・あきら)>

◆生まれ 1997年(平9)7月18日、64年東京五輪男子マラソン銅メダルの円谷幸吉さんと同じ福島県須賀川市生まれ。

◆経歴 長沼小3年の時に円谷ランナーズで始め、長沼中から学法石川高。

◆「学生最強」 東洋大では2年から箱根駅伝出場。昨年の日本選手権では5000メートル(5位)1万メートル(4位)と大迫傑以来の学生ダブル入賞。続く7月のユニバーシアード・ハーフマラソンに優勝し「学生最強」の称号を得た。

◆衝撃の記録 今年の箱根駅伝2区(23・1キロ)を1時間5分57秒で走破。09年にモグス(山梨学院大)が記録した1時間6分4秒を更新。解説の瀬古利彦氏も「まさか、驚かされた」とびっくり。

◆公約達成 かねての目標通り、1万メートルでの東京五輪を決めた。さらに4年後の24年パリ大会はマラソンでの出場を目指している。

◆サイズ 178センチ、62キロ。

 

◆長距離種目の五輪出場 東京五輪の出場枠は1種目につき最大3人。出場資格を得るには五輪参加標準記録を突破するか、世界ランキングで上位に入ることが条件だ。この日は参加標準記録を持つ優勝者のみが内定し、残りの代表2枠は来年へ持ち越し。来年5月3日に1万メートルだけの日本選手権(静岡・エコパスタジアム)が行われ、広中のいる5000メートルなどは6月下旬の日本選手権(ヤンマースタジアム長居)が最終選考の場となる。