女子では、19年世界選手権銅メダルの森秋彩(もり・あい、16=茨城県連盟)が2大会ぶり3度目の優勝を飾った。新型コロナウイルス感染拡大による自粛期間中に競技からいったん離れて、2位だった東京オリンピック(五輪)代表の野口啓代(31=TEAM au)らを下して成長につなげた。男子は西田秀聖(17=奈良県連盟)が初優勝。東京五輪男子代表の楢崎智亜(24=TEAM au)は4位だった。

16歳の高校生、森は3度目の日本一に輝いたが、試合中と変わらず和らぐことはなかった。壁の高さは15メートル、最大傾斜は150度。森は決勝でも155センチの小柄な体を生かし、動きに迷いなく「攻めの気持ち」で頂点を狙った。森を含めて4人が完登し、準決勝の結果で優勝を決めた。試合後、「もっと練習の成果を発揮したかった。出し切りたかった気持ちが強い」と反省を口にした。

「リード種目=森」という期待が重圧だった。試合の度に「勝たないと」という気持ちが強くなり、クライミングを楽しめなかった。自粛期間中の5月はあえて競技から1度離れ、スケートボードでリフレッシュに努めた。改めて「クライミングが好き」と再確認した。その後は、持ち味の持久力を取り戻すために登り込みを増やした。

世界と戦うために体重増にも注力し、1食のご飯はどんぶり2杯がノルマ。成長期で食事量も増え、前日の10日深夜には夜食でラーメンまで食べた。心身に余裕のある状態で、この日に臨めた。東京五輪代表選考問題は不透明な状況が続く。「複雑だが、五輪への希望を捨てずに楽しむことを忘れずに取り組みたい」と前を向いた。【峯岸佑樹】