<南米選手権(コパ・アメリカ):日本0-4チリ>◇17日(日本時間18日)◇1次リーグC組◇ブラジル・サンパウロ

日刊スポーツのサッカー担当記者が独自の視点で掘り下げる「Nikkan eye」。今回は、レアル・マドリード移籍が決まった日本代表MF久保建英(18)のプレーに目を向けた。森保一監督が今大会の目的とするのが20年東京オリンピック(五輪)に向けた強化だが、五輪世代さえ飛び越えた18歳は、すでにチームの命運を握る存在であることを証明した。

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あの時と同じ-。そう想起させる久保の2つのプレーがあった。1つ目は前半4分のFK。ペナルティーエリアの左ライン付近からだった。4月のルヴァン杯サガン鳥栖戦で、ほぼ同じ位置から遠いサイドへ強烈な1発を決めていた。久保は再び同じコースを狙った。

2つ目は前半43分。右サイドからドリブルで運び、サイドライン付近でDF2人に囲まれた。2人の間をドリブル突破しチャンスを作った9日のエルサルバドル戦と似た位置だった。

結果として両方とも阻まれた。まずFK。壁の後ろに立ってシュートコースを消す相手選手の位置取りが正確だった。よりコースは限定され、ボールは少し浮いて外れた。次にドリブル。中へ切り込むも、DFは体勢を崩すどころかすぐに修正。正対した相手にスキはなく、パスで後方に戻すほかなかった。久保が「創造性というか、臨機応変に対応されていた」と話した通り、また1つ高いレベルを経験した様子だった。

チリは約2カ月前から合宿と6度の親善試合で仕上げてきた。一方の森保ジャパンは23人中18人が五輪世代。先発11人6人が初めてのA代表での試合だった。今回、勝敗やスコアは特に大きな意味を持たない。大会出場の目的はあくまで東京五輪にあるからだ。

五輪世代が本気のA代表に、現時点でどれだけ戦えるのか。それを確認できる貴重な舞台で最も存在感を示したのは久保だった。バルセロナの下部組織時代に磨いたDFの間を見つけて受ける技術。そこはチリ相手にも難なくやれた。さらに狭い局面を打開し、惜しいシュートも放った。チームの攻撃をけん引するのは久保だとはっきりした。

Rマドリードへ移籍し、A代表へ定着していくであろう久保。必然的に五輪世代のチームでプレーできる時間は減ってくる。五輪まで残り約1年間。今大会の最低残り2試合も含めて複数の起用法を試し、最大限に力を出せる「久保モード」のような切り札的オプションを作るのも1つだ。

この日は4バック(4-2-3-1)のトップ下だったが、2列目もFWもこなす万能型。まずは森保監督の代名詞といえる3バック(3-4-2-1)で、MF中島との2シャドーでの化学反応を見たい。【岡崎悠利】