日本代表MF久保建英が所属する3位ビリャレアルは29日、スペインリーグ第11節で最も勢いに乗る首位の難敵とアウェーで対戦する(※データはすべて第10節終了時点)。

今節の対戦相手、レアル・ソシエダードは「ラ・レアル」の愛称で呼ばれ、スペイン北部の町サン・セバスティアンを本拠地とするバスク州のクラブ。フランス国境に近く、国際色豊かでスペイン屈指の美食の町として知られる。独自の文化や伝統を持ち、バスク語というスペイン語とはまったく異なる独特な言語を有している。

1909年に創立されたRソシエダードは、111年もの長い歴史の中で過去に2度、1980-81と81-82の2シーズン連続でリーグ優勝を成し遂げているが、そのチャンスが今季再び訪れている。

イマノル・アルグアシル監督率いるチームは第10節を終えた時点で暫定ながら首位に立っている(※新型コロナウイルスの影響で消化試合数がクラブによって異なる)。ここまでのリーグ成績は7勝2分け1敗21得点4失点の勝ち点23で、敗北を喫したのはバレンシア戦のみ。前節カディス戦でリーグ6連勝を達成し、5節連続で単独首位をキープしている。得点数はリーグトップ、失点数は2失点のアトレチコ・マドリードに次ぎ2位と、攻守に渡り素晴らしい成績である。

そして勝ち点23というのは、2度目のリーグ優勝を成し遂げた80-81シーズンと並ぶ、クラブ史上のリーグ開幕から10節の最高勝ち点記録である(※当時は勝利勝ち点が2だったため勝ち点3で計算)。もし今節、ビリャレアルに勝利した場合、クラブ史上の最高勝ち点の単独記録を樹立することになる。

また、リーグ開幕からのアウェーゲーム5節の4勝1分け0敗という成績はクラブ史上の最高記録、リーグ6連勝は88年に並び、クラブ史上のリーグ最多連勝記録となっている。

華々しいスタートを切っているRソシエダードだが、その成功は今季始まったわけではない。昨季もイマノル監督に率いられたチームは、リーグ戦を6位で終えて欧州リーグ出場権を獲得し、国王杯では決勝戦(※新型コロナウイルスの影響で延期され来年4月に開催予定)に進出しており、すでにその可能性を予感させていた。

そして今季はイマノル監督のサッカーがさらに浸透したところに、マンチェスター・シティーから経験豊富な元スペイン代表MFダビド・シルバが加入した。入団時、新型コロナウイルス陽性で出遅れたが、復帰後はイマノル監督にとっては欠かせないピースとなり、チームの頭脳として機能している。

さらにFWオヤルサバルが日々大きな成長を遂げていることも大きい。Rソシエダードの下部組織出身で今季トップチーム6シーズン目。23歳ながらすでにキャプテンマークを巻き、背番号10をつけエースの貫禄を漂わせている。

リーグ第10節を終えた時点で6得点を記録し、5得点のルイス・スアレス、ジョアン・フェリックス(Aマドリード)、ジェラール・モレノ、パコ・アルカセル(ビリャレアル)、イアゴ・アスパス(セルタ)の5選手や、メッシ(バルセロナ)、ベンゼマ(レアル・マドリード)などを上回り、ピチチ賞(リーグ得点王)争いで単独トップに立っている。スペイン代表に定着し、先月行われた欧州ネーションズリーグのスイス戦で決勝点を記録し、今月のドイツ戦でもゴールを決めた。

Rソシエダードで際立つのは、下部組織出身選手の多さだろう。欧州屈指の下部組織を保有しており、練習場スビエタで育った選手が次々と昇格し、トップチームの半数以上を占めている。

下部組織出身選手では今季、サルドゥア、エルストンド、アイエン・ムニョス、ゴロサベル、ル・ノルマン、イジャラメンディ、スベルディア、グリディ、ゲバラ、サンガリ、スビメンディ、ロベルト・ロペス、オヤルサバル、メルケランス、バレネチェア、バウティスタの16選手が所属。Rソシエダードの哲学を備えた選手たちが、外部から加入したダビド・シルバ、ヤヌザイ、ウィリアン・ジョゼ、ミケル・メリーノなどとうまく融合していることも成功の要因のひとつとなっている。

ビリャレアルは今節、このような特徴を持つチームと対戦することになるが、この2チームには、欧州リーグに参加していること、ポゼッションサッカーを好むこと、スペイン人や下部組織出身選手が多いこと、今季パレホやダビド・シルバというスペインサッカー界を代表するベテラン選手が加入したこと、指揮を執るエメリ監督とイマノル監督がともにバスク出身で年齢も49歳と同じことなど、さまざまな共通点がある。

そして両チームの今季の公式戦成績を見てみると、ビリャレアルは14試合8勝5分け1敗(リーグ10試合5勝4分け1敗、欧州リーグ:4試合3勝1分け0敗)。一方のRソシエダードは14試合9勝3分け2敗(リーグ10試合7勝2分け1敗、欧州リーグ4試合2勝1分け1敗)と拮抗(きっこう)している。

ビリャレアルは勝ち点19で3位、Rソシエダードは勝ち点23で首位。お互いに得点力の高いFWを抱えており、見どころの多い面白い試合展開になることが予想される。

しかし26日にイスラエルで行われた欧州リーグのマカビ・テルアビブ戦に先発出場し、中2日でRソシエダード戦を迎える久保は今季リーグ戦で出場時間を得るのに苦しんでおり、リーグ戦4試合連続のベンチスタートが濃厚となっている。

【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)