先日、久しぶりに「スポーツ笑顔の教室」に夢先生として参加した。東日本大震災復興支援「スポーツこころのプロジェクト」の活動の1つだ。

被災した子供たちの「こころの回復」が目的とされている。日本サッカー協会を運営本部として、公益財団法人スポーツ協会、日本オリンピック委員会、日本サッカー協会、日本トップリーグ連携機構の4団体が主催する事業。大きなプロジェクトであることは、これだけの団体が主催していることでも分かる。


「スポーツ笑顔の教室」に参加
「スポーツ笑顔の教室」に参加

今回は新型コロナウイルスの影響で初めて「オンライン」での授業となった。

本来なら、現地に出向いて身体を動かすプログラムを実施する。この時間はアイスブレイク(初対面の緊張をほぐす行動)にもなる。そのあと教室に移動し、夢先生が自身の経験などを子供たちに話すトークセッションを行うのだ。

私は現役引退後、このプロジェクトが好きで多く参加してきた。

ただ今回はトークのみ。同じフィールドでリアルに伝えていたのとは異なる環境だから、やる前は不安が大きかった。しかし、今回担当した岩手県久慈市の中学生のみなさんは、画面越しでも一生懸命聞く姿勢が伝わってきてとてもうれしかった。このような状況になってから、直接触れ合うスポーツの普及活動がなかなかできなかったので、うれしく感じた。

掛け合いなどはどうしても多少の時差が生まれてしまうが、私自身は充実感があった。このオンラインに関しては「合わない」「向いてない」などネガティブな意見もある。だが、きっとスタンダードの一部になる。当たり前が当たり前でなくなっていくのを私たちは今体感している。ある意味、すごい時代に生きている。


 
 

私自身、プライベートでもオンラインのトレーニングを受けたりしている。参加している方は、神戸、静岡など居住地もさまざまでなかなか面白いし、意外と一体感みたいなものも生まれ、ストレスがないと感じる。

また、同じ産院で同じ時期に出産した母親仲間たちとも、産後にオンラインで時間を合わせて話したりした。なかなか会えないので、とても癒やしの時間にもなった。

ウェビナーの普及も早かった。家で各種セミナーを視聴できることは、私を含めた子育て世代にとっては魅力的でもある。聞きたいシンポジウムがあっても、会場に足を運ぶことが極めて難しいからだ。


もちろん、良いところばかりではない。スポーツなど、複数の人間が何かを一緒にやることに関しては、まだまだ課題がある。ともに同じ空間でスポーツを楽しむことがまた「普通」になってほしいと思う。

新たなスタンダードと、これまでのスタイルをうまく融合させていきたい。目的と目標のバランス、ソフトとハードのバランスが大切なことなのだろう。どちらも必要でどちらも重要。相反したものが、リスペクトし合っていく。こんなことが必要なのだと思う。

きっとこの先、この時代に合った、かつサステイナブルなものが根付いていく。私もいろんなチャレンジをしたいと最近思い始めている。

(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表)