まるでゴルフスイングマシーンのようだった。

 毎ホールのようにフェアウェーをキープし、グリーンを捉え、難しい距離のパターを入れ続ける。トータル10バーディー、2ボギーで全英オープンレコードの62。ノーボギーの65でラウンドしたフィル・ミケルソンを後半突き放し、ヘンリク・ステンソンは歴史に残る激闘のマッチプレーを制した。

 ロイヤルトルーンGCは実際にコースに行くと、その難易度を実感する。フェアウェーの落としどころが見えなかったり、グリーン面が見えづらい設計のため実際よりもかなりグリーンが小さく見え、ターゲットを定めづらい。

 そんな難易度の高いコースで優勝争いのプレッシャーを感じさせないゴルフを展開したステンソンの背景にあるのは揺るぎない技術だ。

優勝カップにキスするステンソン
優勝カップにキスするステンソン

●スペシャリストチームの最高傑作

 ゴルファーのスイング構築はロジックタイプとフィーリングタイプで構築方法が異なる。20代から活躍する選手が多いPGAツアーにあって、30歳からPGAツアーに参戦した遅咲きのステンソンは感性よりも論理的で精密な設計に基づいてゴルフを組み立ててきた。

 それを物語るのがステンソンをサポートする10人の専門家のチームの存在だ。

 ロジックタイプは納得して物事を行うために専門家に間違いのない助言を求める傾向がある。この心技体におけるプロフェッショナルたちは、F1メカニックの分業のように彼らの専門知識でヘンリク・ステンソンという最高のマシンを作り上げてきた。

 特にロイヤルトルーンGCで正確かつパワフルなショットを放ち続けたステンソンのスイングは、スイングコーチ、ピート・コーウェンと共に15年かけて作られてきた最高傑作だ。ピート・コーウェンアカデミーのプロ専用の個室打席にステンソンの連続写真が飾られていることから、コーウェンのスパイラルスイング理論を最も体現したスイングだと言える。

●怒涛のバーディーラッシュを実現したパッティング

 PGAツアーではショットとパッティングでコーチが異なることは一般的になっている。それだけ両者の専門性が高く分業制が進んでいるのだ。

 ステンソンのパッティングはパッティングコーチ、フィル・ケニオンによって精密に設計されている。

 全英オープン前の日曜日、フィル・ケニオンの本拠地、イングランド・リバプールから30分ほどの場所にあるインドア・パッティングスタジオを訪れた。

 フィル・ケニオンの施設には4台のカメラとパッティングストロークを数値化する分析機器、傾斜を自由に変えることができるパッティンググリーン、重心の位置を測定するためのマットなど最新のパッティング分析機器が揃っている。それらを使用し、ストローク軌道、打点、フェースアングル、テンポなどあらゆる分野で科学的な分析を行い、修正を加える。

 振り幅が小さいパッティングではストローク中に修正の動きを行うことが難しい。そのため、毎回正確なアドレスをすることがカップインの確率を高める。だが、この基本であるアドレスをロジカルに細かくチェックできる人物は少ない。

 フィル・ケニオンのレッスンはアドレスで始まり、アドレスで終わる。

 2時間をかけて頭、目線、上半身、下半身などパーツごとに細かくアドレスを整えていく。アドレスのパーツを整えるごとにストロークの数値が自然と向上する。

「パッティングではアドレスがとても重要だ」

 最後にフィル・ケニオンが発した言葉の意味は数字から導き出された説得力のあるものだった。

フィル・ケニオンの施設で指導を受ける筆者
フィル・ケニオンの施設で指導を受ける筆者

●再現性の高いパッティングアドレスを作るために

 パッティングのアドレスでおろそかにされがちなのは目線だ。

 目標の見方には人それぞれクセがあり、目標物に対して左右どちらかにずれて構えている場合が多い。そして、自分自身ではそのズレに気づくことは難しい。私も目線が目標よりも右を向き、そのため軌道もインサイドアウトになる傾向があるということがわかった。

 ターゲットを正確にとらえるために目線を飛球線と平行にする必要がある。練習では飛球線がイメージできる直線のラインを常に目でなぞるようにしたい。パッティングマットの線や飛球線と平行に棒などを置いても良い。この時に両目の前に割り箸などの直線的な物体を当て、その飛球線のラインと重なるようにチェックすると更に良いだろう。

 目線を目標に対して適切に保つ練習をすることであなたのパッティングは飛躍的に良くなることだろう。


 ◆吉田洋一郎(よしだ・ひろいちろう)北海道苫小牧市出身。シングルプレーヤー養成に特化したゴルフスイングコンサルタント。メジャータイトル21勝に貢献した世界NO・1コーチ、デビッド・レッドベター氏を日本へ2度招聘し、レッスンメソッドを直接学ぶ。ゴルフ先進国アメリカにて米PGAツアー選手を指導する50人以上のゴルフインストラクターから心技体における最新理論を学び研究活動を行っている。早大スポーツ学術院で最新科学機器を用いた共同研究も。監修した書籍「ゴルフのきほん」(西東社)は3万部のロングセラー。オフィシャルブログhttp://hiroichiro.com/blog/

(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ゴルフスイングコンサルタント吉田洋一郎の日本人は知らない米PGAツアーティーチングの世界」)