稲見萌寧(22)は、貪欲だ。それも人並み外れて。国内女子ゴルフツアーで、昨季は初の賞金女王に輝いた。昨夏の東京オリンピック(五輪)では銀メダルを獲得。ゴルフで日本人初の五輪メダリストとなった。
そんな栄光に、オフの間は少しぐらい浸ってもよさそうなもの。だが昨季最終戦から約2カ月後の先月、稲見は「基本、過去を考えたりしない」などと答え、すでに「賞金女王」と「銀メダリスト」の肩書を捨て去っていた。そして「また一から。最初に戻った感じ」と、昨季の快進撃を忘れて挑戦者の精神状態になっていた。
「おごり」や「油断」といったものは、最も縁遠いといえる。「日本で1番になったといっても昨季だけ」と、現状維持では昨季に続いて活躍できないと、誰よりも稲見自身が感じている印象。昨季終盤に患った腰痛の影響で、12月からのオフの約2カ月の練習量は「30~40%しかできていない。めちゃくちゃストレス。体調が悪い時でも1個しかできなかった、顔のニキビが同時に3個できた」と、苦笑いで明かした。1日10時間にも及ぶ練習は、もはや努力しているという感覚を超越し、やらないと違和感を覚えるほどだ。
その腰痛も、1月から新トレーナーに沢木弘之氏(45)を迎え、快方に向かっている。2月からは本来の豊富な練習量に戻すことも可能となった。「2月からは自分の練習とトレーニングに全部時間を割きたい。2月は朝から晩まで練習できるように頑張ります」ときっぱり。ウズウズしていたものを解消できる喜びにあふれた、満面の笑みで語っていた。「プライベートは基本ない」とも笑って話し、練習漬けの生活が、むしろ楽しくて仕方ない。頂点に立っても、ゴルフに対する貪欲さは変わらない。
今季から渋野日向子と古江彩佳が本格参戦する米ツアーについては「基本考えていない」という。続けて「私は日本人として、日本で1番にずっといたいというのが、一番強いですね」と語った。
今季から国内女子ツアーは、獲得賞金に応じてシード権を付与することはなくなる。各大会によって異なる賞金を指標とするのではなく、総合的に活躍を判断したポイントに応じて、シード権が与えられることになった。賞金ランキングではなく、ポイントランキングで争われる格好だ。「初めての感じなので、どのぐらい頑張ったら1位になれるんだろうとか、全く分からない。毎週、上位にいろということかなと、とらえています。毎週、負けたくないので」。勝利に対して一段と貪欲になったことで、一段と勝負強くなった姿を見ることになりそうだと強く感じた。【高田文太】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)




