13位で出たツアー未勝利の久常涼(20=SBSホールディングス)が、16人が出場する日本勢トップの8位に浮上した。

6バーディー、1ボギーの65と5つ伸ばし、通算9アンダー、201。14アンダーで首位のリッキー・ファウラー(米国)とは5打差となった。岡山・作陽高の4歳先輩にあたる渋野日向子同様、物おじしない天真らんまんな性格と海外志向。日本よりも先に米ツアーで勝つ可能性を残し、最終日に臨む。

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たたき上げのゴルフ人生を象徴するように、誰も通らないルートで奪ったバーディー締めだった。18番パー5。久常はティーショットを左に曲げたが、木に当たってフェアウエーの絶好の位置に出てきた。「ラッキー」と喜んだのもつかの間、第2打は「ダフった」と、ピンまで30ヤードも届かなかった。第3打のアプローチは正確すぎてピンを直撃し、2メートルもカップから遠ざかった。それでもバーディーパットを決め首位と5打差。最終日は「皆さんを楽しませられるように頑張りたい」と、不敵に笑った。

ショットとパットがかみ合った。3番パー3でティーショットを1メートルにつけて最初のバーディー。15番パー4は8メートルのパットを決めた。来季出場権を懸けた欧州ツアーの最終QT(予選会)を受ける予定で、今季はスペインでの同ツアー出場。さらにアジアンツアーでサウジアラビア、シンガポール、タイ、韓国でも戦った。「いろんな芝を経験したことが生きている」。米ツアーのセッティングも「速いグリーンに慣れてきた」と、適応能力は高い。

自分で日々の練習を決める、作陽高でプレーも性格もノビノビ成長した。同高3年時に国内ツアーのQTを受けたが1次敗退。それでもプロに転向した。推薦出場から始まり、結果を残さなければ次戦の保証がない状況を勝ち抜いてきた。昨季は下部ツアー3勝。3勝でレギュラーツアー昇格という、07年制定の規定を史上初めてクリアした。さらに残り試合で、レギュラーの今季シード権も獲得。勝負強さは折り紙付きだ。

昨年の開幕前は、松山と初対面し練習ラウンドを回った。「ずっとテレビの中の人。『ああ、人間なんだな』と思った」と、素直に話していた。1年経過し、今大会優勝で3億円近い賞金を得られると聞いても「お金じゃないので」と大人のコメント。ただ、本音を隠せず「今は円安が進んでいるから、3億円よりもっといくかも」と話し、報道陣を笑わせた。勝負強い愛されキャラ。先輩の渋野に続き、大舞台で力を発揮するつもりだ。【高田文太】

◆久常涼(ひさつね・りょう)2002年(平14)9月9日、岡山県生まれ。3歳からゴルフを始める。岡山・津山東中3年時の17年日本ジュニア(12~14歳の部)、作陽高1年時の18年全国高校選手権で優勝。19、20年ナショナルチームメンバー。20年12月にプロ転向。昨年は下部ツアー8戦で3勝後、レギュラーツアー7戦で2度のトップ10を含む、全戦予選通過で今季のシード権を獲得した。今季は現在賞金ランキング15位。175センチ、75キロ。

○…第2ラウンドで日本勢最上位の中島啓太は、イーグル締めで米ツアー初優勝に望みをつないだ。順位こそ5位から14位に後退したが、69と1つ伸ばして8アンダー。スタートから16ホール連続パーで、17番でボギーが先行したが「引きずらなかった」。18番パー5は切り替えて2オンに成功。12メートルのパットを沈めてガッツポーズをつくった。首位と6打差の最終日は「人生を変えられる1日にしたい。来年プレーする場所も変えられると思う」と、目標の米ツアーメンバー入りがかなう優勝を目指す決意だ。