日本のお家芸、レスリングが窮地に立たされた。リオデジャネイロ五輪アジア予選(18日~・カザフスタン)に臨む男子フリーとグレコの代表チームが7日、都内で練習を公開。フリー74キロ級の高谷惣亮(26=ALSOK)が先月末に右ヒザを故障し、ぶっつけ本番で出場することが分かった。昨年の世界選手権で1つも出場枠が取れず、予選もピンチ。52年ヘルシンキ五輪からメダルを取り続けてきた伝統の男子が、出場すらできない可能性もある。
「アジア予選は優勝します。左足だけで勝てる」。思い切り強がった高谷が、フッと本音を漏らした。「一番不安なのは、僕なんですよ…」。一昨年世界2位のエースに衝撃が走ったのは代表合宿中の26日だった。右ヒザ靱帯(じんたい)損傷で全治3週間。「予選辞退も考えた」と明かした。「集中できるし休めていい」と言いながらも「動かずに減量は大変」と苦戦を覚悟して話した。
全6階級のうち5階級で出場枠を獲得している女子に対し、男子は0。残る予選3大会で出場枠獲得を目指すが、道のりは楽ではない。半世紀以上も表彰台に乗り続けている日本で唯一の競技。ところが、今回は大ピンチだ。軽量級を中心にフリーは「1、2階級」(和田強化委員長)、グレコは「3階級」(西口強化委員長)を今大会で目標にするが、それも危ない。
2月に行われたアジア選手権では史上初めてメダル0に終わった男子。1番手の参加ではないとはいえ、西口委員長は「影響はある」と話した。選手の精神面強化のために昨年末からメンタルトレーナーを導入して「できることは、すべてやる。今はまず、出場枠をとること」と同委員長は悲壮な決意を隠さなかった。
高谷とともに出場枠獲得が期待される最軽量級は、両スタイルとも大学生。04年アテネ大会銅の田南部コーチは「メダルをとるのは予選で苦労した選手が多い。厳しさが糧になるから、心配していない」と経験を踏まえて話したが、枠がとれなければメダルもない。【荻島弘一】
◆リオ五輪への道 男子の国別出場枠は各階級19人ずつ。昨年の世界選手権で獲得できなかった国は、大陸予選、世界予選で獲得を目指す。18日からのアジア予選は各階級2位までが出場枠を獲得。ここで逃すと世界予選2大会に挑む。第1戦(4月22日~、ウランバートル)は上位3人、第2戦(5月6日~、イスタンブール)は上位2人が出場枠を手にする。3大会のうち2大会は昨年の全日本選手権優勝者が出場(枠獲得で代表決定)。残る1大会は同2位選手が出場(枠獲得なら優勝者とプレーオフ)するが、両者に差がある場合は3大会とも優勝者が挑む可能性もある。


