【第85回】
ともに生き方見直すチャンス
うつ病(3)
うつ病のリスクを持つ子どもは、小学生で7・8%、中学生では23・8%。北海道大助教授で児童精神科医の伝田健三医師らのチームが北海道の小中学生2万人を対象に子どものうつ病の実態を調べるために行った「気分に関する調査」の結果だ。実際にうつ病にかかっていると推定されるのは小学生の1・6%、中学生の4・6%だが、リスクを持つ子どもまでを考えると、実に多くの子どもたちに高い抑うつ傾向が現れていることが分かる。
「現代の小中学生は、とても疲れています。週休2日のためウイークデーは詰め込み教育がなされ、放課後や週末は学習塾、部活動、習い事、スポーツがあります。さらにテレビ、漫画、インターネットや携帯電話などが、子どもたちの自由時間を侵食しています」と、伝田医師は、多忙すぎる子どもたちの日常を心配する。行き過ぎた忙しさは、ストレスとなり、うつを生み出す原因となるのだ。
「過剰な忙しさは、結果的に対人関係を複雑にします。それが体力を消耗させ、さらに忙しさを呼び込む悪循環を生みがちです。張りつめたような忙しさの中で疲労している時に、環境の変化や、背負い切れないストレスに襲われたりすると、うつ病を発症する危険性が高くなります」と伝田医師は指摘する。
「やろうと思ったことがうまくできない」「何をしても楽しくない」「とても退屈な感じがする」といった感情や「おなかが痛くなる」「よく眠れない」といった体の症状が見えたら、親子で少し立ち止まって生活を見直そう。
伝田医師は「うつ病は心身が疲れ果てたことで起こる大変つらい状態です。でもゆっくり休んでエネルギーを貯えることで回復していく病気でもあります。家族の皆さんが、自分たちの忙しすぎる生き方を見直す1つのチャンスなのかもしれません。苦しい時間をへて回復していったお子さんや家族の中には、うつ病は人生を見つめるための大切な経験だったと振り返る方が少なくありません」と話している。
【ジャーナリスト 月崎時央】
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