世界記録保持者の高木美帆(27=日体大職)は1分53秒72で、18年平昌五輪と同じ銀メダルに終わった。

平昌で取った金銀銅の3個と合わせ、4個目のメダルは冬季五輪の日本勢最多となった。佐藤綾乃(25=ANA)は1分54秒92で4位。高木菜那(29=日本電産サンキョー)は1分55秒34で8位と日本勢は3人とも入賞した。金メダルはイレイン・ブスト(35=オランダ)で1分53秒28の五輪新記録で連覇を果たした。

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またしても女王に届かなかった。4年前、0秒20だった差は0秒44に広がった。高木美は今季W杯の女子1500メートルで3戦に出場して全勝。絶対的な金メダル候補とうたわれるも、現実は厳しかった。

最終15組。3組前のブストのレースは見なかった。最後のウオームアップをしていた真横を、女王が五輪新記録でゴールを切った。歓声が湧く。気にしないようにしても「耳に入ってきた」。それでも「力んだり、やばいぞ、やばいぞとは思わなかった」。焦りはなかった。

スタート直前に瞑想(めいそう)して「集中していた」。集中しすぎてリンク内側のへりに足を引っかけ、転びそうになる場面もあった。1分53秒台前半に設定していたタイム。「出せば勝てる」。信じてスタートラインに立った。

号砲。勢いよく飛び出すと300メートルのラップは25秒10で、25秒51のブストを上回る。しかし、700メートル通過時のラップが28秒16と伸びず、27秒86で通過したブストに大きく離された。この差を最後まで埋められなかった。

「悔しい。その思いだけ。前回は金メダルが取れなかった悔しさとメダルが取れたうれしさが入り交じったけど、今回は金を逃した悔しさが強い。最大のピークを五輪に合わせることで彼女にかなわなかった」。

スケートを続ける以上、避けては通れない壁。この4年間、ブストが脳裏から離れることはなかった。14年ソチ五輪の代表から落選した後、世界大会の練習中、何かを盗もうと業界内ではご法度だが、真後ろについて滑ったこともある。

「1500メートルで勝つ滑りをする」。そう公言し鼓舞してきた。先月には「金メダルを取ることが大前提」とまで言い切った。やれることはやった。それでも一発勝負の五輪で相手が一枚も二枚も上手だった。

決着後、6個目の金メダルを取りこのリンクを去る女王に近づいた。「五輪の舞台では届かなかった。本当に強かった。敬意を表したい」。最後の握手を交わした。【三須一紀】