◇1996年アトランタ大会柔道男子60キロ級決勝(7月26日、ジョージア・ワールドコングレスセンター) 野村忠宏(天理大) 背負い投げ4分35秒 ジョビナッツォ(イタリア)

 柔道競技最終日を金メダルで締めたのは、男子最年少の野村忠宏だった。初出場の海外試合で切れ味鋭い技を連発、ポイントでリードした決勝でも最後まで攻め続けた。残り25秒、背負い投げで一本勝ち。アジア人の五輪3連覇へ、第1歩を踏み出した。同日に行われた女子48キロ級では田村亮子が決勝戦でまさかの黒星。「期待されなかった」(野村)伏兵が、鮮やかに田村ショックを吹き飛ばした。

 野村が柔道を始めたのは、祖父彦忠さん創設の「豊徳館」で。そこには、72年ミュンヘン大会で金メダルに輝いた叔父豊和さんの記念碑が掲げられていた。背負い投げの名手と言われた偉大な叔父の功績を、血筋とともに頭にたたき込んできた。その伝家の宝刀を抜いて獲得した金メダル。163センチの巨人は、40歳となった今でも現役で試合に出続けている。(2015年01月21日東京本社版掲載)