柔道元フランス代表で、全日本柔道連盟(全柔連)広報マーケティング委員のピエール・フラマン氏(49)は、男子100キロ超級で五輪3連覇を狙うテディ・リネール(32=フランス)を「メガスター」と評した。

ピエール氏は、柔道界の絶対王者の存在について「フランスで他のスポーツに例えると、サッカーのジダンクラス。柔道の枠を超えた『メガスター』で、国民から絶大な人気を誇っている。柔道以外のニュースで目にする機会もあり、老若男女が知っている」と説明した。

リネールはフランスで柔道家と実業家の顔を持つ。自身の冠番組で司会を務めたり、子供イベントなどに多々出演しているという。203センチ、140キロの巨体と名前からくる愛称はテディベアで、「優しいお兄さん」として国民から愛されている。怪力かつ俊敏で負けない絶対王者のため、20年2月のGSパリ大会3回戦で東京五輪代表補欠の影浦心(日本中央競馬会)に敗れた際は、非難の声が上がったという。「地元開催でもあり、特にこの負けはショックだった。体も絞れてなくてがっかりした。フランスメディアは、勝ち続ける人やお金持ちで成功している人が失敗しすると、厳しく批判する傾向もある」。

フランス国民も、東京五輪を経て24年パリ五輪での4連覇を期待している。リネールは「大舞台に強い」のが特長とし、「大会に向けてのピーキングが上手。特に五輪や世界選手権での、ここぞの場面で異次元の強さを発揮する。東京五輪決勝では、ぜひ前回と同じ原沢久喜選手と再戦してほしい」と期待を込めた。

5歳で柔道を始めたピエール氏は、78キロ級で96年スイス国際大会優勝やフランス体重別選手権準優勝など実績を誇り、27歳で一線を退いた。所属クラブの合宿で天理大を訪れたことで日本に興味を抱いた。フランス語教員として01年に来日し、京都・立命館宇治高などで勤務。立命館大柔道部のコーチも務め、パワーだけに頼らない日本柔道を学んだ。現在は都内のコンサルティング会社に勤務しながら慶大柔道部のコーチを務め、日本とフランスの橋渡し役を担っている。【峯岸佑樹】

五輪や世界選手権の金メダルを首などに下げるテディ・リネール(本人提供)
五輪や世界選手権の金メダルを首などに下げるテディ・リネール(本人提供)
経営者としての顔を持つテディ・リネール(本人提供)
経営者としての顔を持つテディ・リネール(本人提供)
16年8月、リオデジャネイロ五輪・柔道男子100キロ超級決勝で原沢久喜(左)に攻めさせずに勝利するテディ・リネール
16年8月、リオデジャネイロ五輪・柔道男子100キロ超級決勝で原沢久喜(左)に攻めさせずに勝利するテディ・リネール