<1992年アルベールビル五輪スキー複合団体金 三ケ田礼一(47)>

 昨年9月に東京五輪の開催が決まった時は、用事があって福島県にいました。宿泊先のホテルで朝早く起きて、部屋でテレビ中継を見て、ロゲ前IOC会長が「トォーキョー」と言った時、「いよいよ来るんだな」と。東京五輪招致の関係者が抱き合って、喜び合っているのを見て、実感が湧いてきました。「良かったなあ」と思いました。

 私は2007年に岩手県体育協会の職員になって以来、県内で運動能力の優れた子供たちを見いだし、世界で活躍する選手に育てる事業に携わっています。県内で東京五輪を狙えるレベルの子供たちや、その指導者、関係者には、東京五輪開催が追い風になりました。「東京五輪でメダルを取りたい」と口にする選手もいます。子供たちが大きな希望を持ちました。

 2年後の16年8月にリオ五輪が行われた後、同10月に岩手国体が続きます。リオで活躍した五輪選手が岩手に来て、世界トップ級のプレーを見せてくれるはず。県内の選手たちがそれを見て、刺激を受けて、20年東京五輪へ気持ちを向けられると思う。いい時期に岩手国体を開催できます。

 岩手県出身で、五輪で金メダルを取ったのは私だけで、夏季五輪の金メダリストはいません。しかし夏季競技でも優秀な選手はいます。特にボクシングは岩手県のお家芸で、北上市出身の八重樫東は前WBC世界フライ級王者です。レスリングも期待できると思います。

 東日本大震災の沿岸被災地では、県がボートやヨットなどの水辺のスポーツ施設を修復しました。沿岸の高校からインターハイの優勝者も出ています。被災地から東京五輪の代表選手が生まれれば、被災者の励みになるでしょう。昨年にプロ野球楽天が日本一になって、東北の人たちが大喜びしたように、スポーツには大きな力があります。

 岩手県花巻市が東京五輪のクレー射撃を誘致しています。もし実現して、岩手県民が地元で五輪を見られれば、こんなに素晴らしいことはない。経済効果も含めて、いい影響があると思います。競技を開催できなくても、キャンプを誘致することはできる。沿岸被災地に世界各国の五輪代表選手が来てくれれば、復興の過程を確認してもらえる。地域の人々との交流もしてほしいですね。

 東京五輪を観戦できるとしたら、開会式を見たい。冬季五輪に2度出場して、開会式にも出ましたが、選手は入場前に会場の外にいて、前半のショーを見られない。観客として開会式を最初から最後まで見てみたい。あの華やかさを存分に楽しみたいです。(2014年11月12日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。