<フリークライマー/杉本怜(24)>

 東京五輪・パラリンピックで、スポーツクライミングが5競技の開催都市提案種目として選ばれたことは、うれしいし、やった、という気持ちもありますが、クライミングの世界が有名になってくるし、さらに頑張らないと、というプレッシャーの方があります。競技でそれをはねのけるくらいのパフォーマンスをしたいですね。

 五輪はテレビで見ていた憧れの舞台、夢のような世界だと思っていました。まだ、決まったわけではないですが、新たな目標ができたことで頑張ろうとあらためて思っています。

 僕が小さい頃はジムも充実していなかったし、競技人口も少なかった。だから大人を見て、大人の人と切磋琢磨(せっさたくま)してレベルを上げていく感じだったけど、今は施設も増え、層も厚くなりました。ジュニアのレベルは僕の頃とは比べものにならないくらい上がりました。日々、クライミングが成長しています。世界で活躍してくれる選手がたくさん出てくるのかなと思う。若い選手の存在は刺激になります。

 クライミングは、競うのは結果として人と人ですが、実際はルートと自分との勝負です。そのルートは1つとして同じものはないし、無限にあって答えがない。パワーも必要ですが、戦略性という特性が面白い。選手によって特徴があるし、そういうところを見てほしい。

 競技の環境は決して恵まれているとは言えません。五輪競技になって、そこで活躍するのはとても大きいことだと思います。選手が増えればおのずと活躍する選手が出てくる。そうなれば、今以上に注目してくれる人が出てくると思います。五輪が競技普及のきっかけになってくれればいいですね。

(2016年1月13日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。