<アテネ&北京 日本代表 野球評論家 宮本慎也(45)>

 野球人生の中で、最も緊張した大会といえば、アテネ五輪以外に思い浮かびません。PL学園時代に出場した甲子園や日本シリーズは緊張しましたが「チームの代表」という意識。国際大会でもあるWBCも「野球選手として日本を代表している」という意識です。「日本の代表」という意識は、五輪以外には感じませんでした。

 北京五輪にも出場しましたが、アテネ五輪はプロが主体となって初めて戦う世界大会でした。当然のように「金メダル」を期待されるし、個人的にはチームの主将にも指名されました。五輪ともなれば、普段は野球を見ない人も応援してくれます。「金メダル」以外は日本に帰れない、という重圧を感じました。

 準決勝でオーストラリアに敗れ、結果は銅メダル。期待された金メダル獲得が絶望となった中で戦う3位決定戦も、精神的に難しい戦いでした。野球は団体競技ですが、個人競技で金メダルが期待されながら3位決定戦を戦う競技の選手は、心の底から応援するし、そこで結果を残せる選手は本当に強い精神力を持っていると思います。

 勝負事とはいえ、結果以外にも大事なものがあるのだと、学ばせてもらったのも五輪でした。日本人の持つ「潔さ」は、世界に胸を張れるスピリッツです。不可解な判定にも、不服そうな表情を出す選手は少ないし、身だしなみやフェアプレー精神も世界一です。五輪はスポーツを通じ、日本人の素晴らしさを世界にアピールできる大会です。20年の東京五輪で野球が正式種目に復活しましたが、それ以降も採用してもらいたいし、実現できるように尽力していこうと思っています。

(2016年8月24日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。