<ロンドン五輪銅 女子バレー前代表監督 真鍋政義(53)>

 08年12月に監督に就任してすぐ、当時日本協会の名誉会長だった松平さん(故松平康隆)に呼ばれて質問された。ロンドンまで3年半ある。「真鍋、お前の目標はなんだ」と。「ロンドン五輪でメダルを取ろうと思っています」と答えると、「ふざけるな」と怒られた。そんなに簡単にメダルは取れない、と。

 日本は世界で一番身長が低い。松平さんには、「この3年半で、世界のバレーボール関係者に『真鍋の戦術や戦略は常識』と言わせろ。非常識を常識にしろ。常識の延長線上には常識しかない」と言われた。世界と同じことをしていても勝てない。1カ月、本当にいろいろ考えた。

 日本のチームは男女とも、金メダルを取った時は世界で1つしかない技を持っていた。女子は東京五輪では大松さん(故大松博文)が回転レシーブを開発して、モントリオール五輪では山田さん(故山田重雄)が、ひかり攻撃と名付けて速いトス、攻撃をしていた。また男子のミュンヘン五輪は時間差攻撃があった。

 僕もMB1(通常2人のミドルブロッカーを1人にして攻撃に人数を割く戦術)とかハイブリッド6(同0人の戦術)とか、見る人にも分かりやすく戦術に名前をつけたりした。批判もいっぱいあった。そんなことをやらなくていいのに、とか。たしかに名前はつけなくてもいい。でも中国とかブラジルとかアメリカとか、僕がそういう国の監督だったら、そんなことしない。普通に戦いますよ。非常識を常識に、です。なにかをやらないと勝てない。その思いだった。

 本田宗一郎さんの好きな言葉がある。「チャレンジして失敗することよりも、なにもしないことを恐れろ」。いろんなことをやってきた。世界と同じことをしたら、東京五輪でも絶対勝てない。五輪のリポートは100枚近いものを(日本協会に)提出した。これからも、要請があれば協力していきたい。

(2017年1月18日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。