今でこそJRA騎手ですが、かつては体操選手になることを夢見ていました。父が体操をやっていたこともあり、自宅に作ってくれた鉄棒で遊んでいた記憶があります。田舎の小さな町でしたから、周りの友達と比べてもいろいろと出来たかな。今でも皆さんの前でバック宙をお見せする機会はありますよ。

例えばダービー当日。馬を操る騎手の身体能力の高さをファンのみなさんにわかっていただけるよう、昼休みに東京競馬場のウイナーズサークルで行われる騎手紹介の際に披露しています。10年にエイシンフラッシュで勝たせていただく前年の09年から、騎乗依頼があれば毎年やっています。

小学校低学年の頃は6歳上の兄の影響で、体操教室に通っていました。一緒に自転車で駅に行き、電車とバスを乗り継いで高校の体育館で練習してね。学校が終わってから行っていましたから、帰宅は午後10時を回ることもありました。いつも翌日は寝不足でしたよ(笑い)。通っていたのは本当に短い期間でしたが、この経験が馬乗りとしてのバランスを養う基礎づくりになったのかもしれません。

その後もずーっと体操選手に憧れがありました。(84年ロサンゼルス五輪金メダルの)森末慎二選手など、よく見ていましたね。中学2年に入って将来を考えた時も、まだ体操選手になりたくて。でも、すでに周りとはレベルが違っていました。同年代でムーンサルトができる人もいて「これは無理だな」、と。

騎手を意識し始めたのは体が小さく、体操のおかげで身体能力にもそれなりに自信があったためです。周囲の影響もありました。中学3年だった85年にジャパンCをテレビで見た際、シンボリルドルフと地方馬ロッキータイガーが圧倒的に強かった外国馬を負かして1、2着を独占したことに「オリンピックみたいだ!」と感動し、騎手になる決意を固めました。

やっぱり五輪に出る方はすごい。毎週末レースがあるので、現地に出向く時間を確保するのは難しいですが、ぜひ生で観戦したいですね。体操に、水泳に、陸上に。馬術も見る方に知識が求められるスポーツですが、演技をする美しさ、「人馬一体」を皆さんとともに感じたいです。もちろん東京五輪の期間中も競馬開催のことを忘れないでくださいね。オリンピアンに負けない熱いレースを繰り広げたいと思います!(247人目)