昔、テレビで「ぐるっと海道3万キロ」という番組がありました。日本の海岸線を結ぶと約3万3000キロになる。これだけ海に接するチャンスがある国で、もうすぐ東京オリンピック(五輪)が開かれるのは、セーリング競技にとっても大きな転機になると思います。

ヨットって、乗ると本当に面白いし、自然と接せられて気持ちがいい。ただ、競技の特性が一般の方にはなかなか分かりにくい。艇が進む理屈が分からない、規則がややこしく、道具も多い。海の特性も未知で、分からないことだらけ。そのセーリングを、少しでも認識していただける機会が東京五輪なんです。

一般の方が、なかなか生でセーリング競技を見るチャンスがない。生で見るには、海に行って船に乗って沖に出なくてはいけない。まず、その物理的な制約を何とかしないと。東京五輪では、浜に大きな電光スクリーンを備える予定です。また、最後のメダルレースを、できるだけ陸に近い海面で行って、陸に仮設席をつくることも考えられています。

私は京都の山科というところに住んでいて、琵琶湖がすぐそばだったんです。その琵琶湖に浮かぶヨットを眺めていて、その情景がすり込まれたんですね。大学に入って、ヨットを始めました。そうすると、こんなに面白い競技はない。そこから世界最高峰のアメリカズカップにはまり、人生の半分以上をセーリングに関わってきました。

その私にとっても、東京五輪は、セーリングに興味を持っていただける最高の舞台です。江の島という環境があり、選手の方も、十分に力がそろいつつある。過去、日本は、470級で銅、銀メダルを獲得できました。次は、東京で頂点の金メダルに行けると期待しています。

また、この機会に、ITを使ったe-sailingに連盟も力を入れ始めました。少しでもセーリングに接してもらうため、委員会を立ち上げました。なかなか海に行く機会がなくても、これなら若い方々が簡単に始めるきっかけになってくれると思います。(346人目)