今月2日に都内でパラリンピック出場を目指す若手アスリートの活動を支援する「ネクストパラアスリートスカラーシップ」(NPAS)の第1期生授与式を行いました。私が副会長を務める日本パラリンピアンズ協会(PAJ)が創設した奨学金制度で、29人の応募者から車いすバスケットボールの古沢拓也選手(21)ら4人を選出しました。

 20年東京大会決定でパラへの助成金が増額され、代表合宿や遠征などの強化費に充てられています。一方で学生などへの支援は手薄なままです。用具の購入費や遠征に同行する親の交通費などは年間かなりの額になります。それを支援したいというのがこの奨学金制度創設のきっかけです。

 もちろん選ばれた選手にはパラリンピックでの活躍を期待していますが、この制度の真の狙いはパラの意義や価値をしっかりと社会に発信できる未来のリーダーを育てることにあります。だから応募者には何のためにパラリンピックを目指し、スポーツを通じて社会に何を伝えていくのかを作文してもらい、その内容を選考でも重視しました。

 20年東京大会へ向けて競技団体は競技力強化に注力しています。ただパラアスリートのゴールはメダルを取ることだけではないと思っています。障がい者スポーツの発展や、共生社会実現へ向けた社会活動など期待される役割はすごく大きい。そのために人間力も高める必要がある。そこを支えていくのがパラリンピック出場経験者で組織するPAJの使命だと考えています。

 4人には年間50万円の奨学金とともに、英会話のオンライン学習プログラムも提供します。海外の選手とも積極的に交流して、グローバルな視点を身につけてほしいと考えたからです。さらに私たちPAJの理事が各選手のメンター(助言者)として、相談に乗ったり、助言をして、人間としての成長をサポートしていきます。

 パラ競技団体のスポンサー企業も、20年大会へ向けて急増しています。ありがたいことですが、20年以降に活躍する選手も育てていかなければ日本のスポーツの発展はありません。そんな次世代にも目を向けた支援の輪が広がるとうれしいですね。NPASも将来的にはもっとネットワークを広げて、支援できる若手を今の倍くらいに増やせればと考えています。

 

 ◆大日方邦子(おびなた・くにこ)アルペンスキーでパラリンピック5大会連続出場し、10個のメダルを獲得(金2、銀3、銅5)。10年引退。現在は日本パラリンピアンズ協会副会長で、来年の平昌パラリンピック日本選手団長。電通パブリックリレーションズ勤務。45歳。