今年も6月から早大で「パラリンピック概論」の授業が始まりました。私も講師になって3年目になります。5年前のスタート時は収容80人ほどの教室だったと聞きましたが、年々増えて今年度は約130人が履修しています。朝早い1限目なのに出席率が高く、パラリンピックに対する学生たちの関心の高さを肌で感じています。

近年はパラリンピックに関する情報と接する機会が増えたこともあり、授業では質問が途切れません。90分授業の約半分の時間を質問を受ける時間に割いています。「なぜパラは五輪の後に開催するのか」「企業はパラのどこに興味を持つのか」など、問題意識の高い質問からテーマを引き出して、ディスカッションすることも少なくありません。

授業には現役のパラアスリートのほかに、企業やメディアの関係者もゲストに招いて話をしてもらいます。パラの知識を植え付けるのではなく、学生たちにパラという視点から、新しい切り口で社会を見てほしいというのが授業のテーマです。企業やメディアのパラへの取り組みを知ることで、見える社会の風景も変わってくるはずです。

講演では障害を負った経緯や競技との出会い、メダル獲得までの道のり話を一気に話す選手が多いですが、学生は身近に感じず、飽きてしまいがちです。授業では学生がどんな話題に興味を示すのか、その反応を見ながら、話の流れやテンポを変えます。そうすると意外なところに興味を持っていたりするので、私自身もとても勉強になります。

16年のリオデジャネイロ大会前はパラを映像で見たことがある学生はほとんどいませんでした。それが17年度は3~4割に増えて、先日の授業では約8割が見ていました。でも生で観戦した学生はまだまだ少数派。ですから授業では観戦リポート課題も設定するなど、パラとの接点を増やす仕掛けを考えています。

リオパラリンピック閉幕後に実施された調査によると、大会への関心が高まったのは若い世代だったそうです。そういえば平昌大会を視察した上智大の学生2人が、帰国後に学内でパラを盛り上げるためにサークルを立ち上げて、1年間で仲間が200人に増えたと聞きました。好奇心が強く、新しい価値観を求める若い学生が、パラに興味を持ってくれると、きっと世の中も変わるはずです。

◆大日方邦子(おびなた・くにこ)アルペンスキーでパラリンピック5大会連続出場し、10個のメダルを獲得(金2、銀3、銅5)。10年引退。現在は日本パラリンピアンズ協会副会長で、平昌パラリンピック日本選手団長を務めた。電通パブリックリレーションズ勤務。47歳。