【パリ10日(日本時間11日)=藤塚大輔】陸上女子やり投げの北口榛花(26=JAL)が悲願の金メダルを獲得した。1投目で今季自己ベストの65メートル80で首位に立ち、そのまま逃げ切った。日本の陸上女子では、史上初のマラソン以外の金メダル。男女の全種目を通じ、5大会ぶり8人目の金メダリストとなった。昨夏の世界選手権に続き、2年連続での世界一。身長179センチのスロワーは、自分の体と向き合いながら新たな歴史を切り開いた。
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北口の強さとは何か。昨年12月下旬の「日本陸連アスレティックス・アワード」。最優秀選手を受賞し、壇上で「自身の強み」をこう説いていた。
「トップを目指すために犠牲を払うことや海外へ出ていくことは当たり前だと思う。日々の生活でそう思えていることが私の強さであり、それを当たり前とは思えない人がいることも最近は分かってきた」
北口は19年から「やり投げ大国」と呼ばれるチェコへ単身で渡り、ダビド・セケラク・コーチに師事。筋力強化や跳躍系のトレーニングに触れて、地力を高めた。「世界一難しい言語」とされるチェコ語を習得すべく、20年には日本のチェコセンター主催のオンライン講座を受講。普段から仲間の会話やレストランの注文に耳をすませ、セケラク・コーチから専門用語をまとめた単語リストを渡されれば必死に覚えた。チェコで練習をともにするチームメートのシチャコバからは「競技への考え方や気持ちを見習いたい」と尊敬の目を向けられる。
異国の地で奮闘する姿勢は、日本女子やり投げ界にも確かな影響を与えている。今大会は上田百寧と斉藤真理菜も出場。最大「3」の出場枠を満たしたのは、日本とオーストラリアのみだった。60年ぶりに日本勢が複数人出場した決勝で10位となった上田は「日本にそういう選手がいるのは刺激になる」と北口に感謝。「負けているままではいられない」と口にし、今月末に出場予定の欧州での試合へ「自己ベスト(61メートル75)を出して、この悔しさを晴らしたい」と切り替えた。
結果に満足せず、高みを目指し続ける姿勢。この流れに北口もうなずく。「すごくうれしい。今後も日本のフルエントリー(3人出場)が続けばいいなと思う」。北口の歩みは、陸上界全体の財産となっている。



