ソチオリンピックから採用されたフィギュアスケート団体戦。今回のピョンチャン(平昌)オリンピックでも種目の1つとして設けられています。

 最初の予選となったのは男子ショートプログラムでした。地元韓国のチャ・ジュンファン選手がミスのない演技で会場を盛り上げます。しかしながら、続く選手らはまさかの失敗の連続。

 結果的に、4回転を含むプログラムでミスを封じ込められたのはただひとり、イスラエルのアレクセイ選手だけでした。競技レベルは4年前よりも進化しているのに、スコア平均を比べれば、4年前よりも低い水準へと落ちています。なぜでしょう。

 氷の質、選手らのピーク管理、映像を通じて確認しても理由はさまざま推測されます。ただやはり、僕はこの早過ぎる競技時刻にあったのでは、と考えています。

 多くの国際大会が午後、それも夜に近い時刻で試合を行っている中、この平昌オリンピックでは男子SPが午前10時に開始されました。その公式練習となるとたった3時間前。異例です。

 このことはあらかじめ知らされていたこと、とはいえ想像以上にパフォーマンスに影響があったのでしょう。フィギュアスケートのように、タイミングを合わせ、複数動作を同時に指令するようなスポーツにおいて、やはり午前からピークを合わせることは簡単ではない、と再確認しました。

 通常、日本の選手らは午前と午後、リンクの一般滑走を避けた時間帯に練習を行うことが多いです。当然動きは午後の方が良く、そのことについては無理なくご理解いただけるでしょう。

 どの予選よりも男子シングルのショートでミスが目立っていたことから考えるに、練習から3時間というあまりにも短い間隔、それは、4回転に代表されるような高度の集中を要するジャンプエレメンツのためには不十分だったのでしょう。午後の練習の方が調子良く進められる、それは、単に時間帯やコンディションの問題でなく、午前練習での感覚を脳内で情報として整理するのには、それなりに時間が必要だからだと思います。

 この不慣れな競技スケジュールに適応するためにも、団体戦で演技した経験というものは大きく生きてくるはずです。ここで悪い出来となってしまった選手も、底を知るという意味で、1つ重要なものさしになるように思います。

 宇野選手、前半のミスを最小にとどめ、後半のジャンプ要素を確実に決めた点が素晴らしかったです。いかに彼にとって、4回転が特別なものでないかということを改めて示したような、そんな貫禄の演技でした。宇野選手にとってはここでの演技を自信に、個人戦で全力を発揮してもらいたいですね。【川崎孝之】

 ◆川崎孝之(かわさき・たかゆき)1991年(平3)、愛知・半田市生まれ。安藤美姫をきっかけに、中学生からスケートファンに。19歳で編み出した陸上フィギュアスケートの活動が注目される。独特な経験を生かしたライター活動、また現在は氷上でのスケート練習に励み、大人からの選手デビューを目指している。